コロナ,BCP写真はイメージです Photo:PIXTA

 テレビのワイドショーやネットニュースは、毎日コロナの話題ばかり。情報過多な状況下で、企業の危機管理担当者は、日々経営陣からの朝令暮改ともいえる指示やプレッシャーに押しつぶされそうになりながら、刻々と変わる事態に右往左往しながら対応しているのではないでしょうか。

 そもそも今回の新型コロナウイルス(COVID-19)というパンデミック感染症に対して、既に事業継続計画(BCP; Business Continuity Planning)を策定している企業は、どのように対応しているのでしょうか。

10年前の「新型インフル対応BCP」は
陳腐化して、使えない企業ばかり

 国に限らず、都道府県や市町村の組織、またほとんどの大企業では、2009年の新型インフルエンザ(豚インフルエンザ)発生の前後に、新型インフルエンザ(鳥インフルエンザがヒト-ヒト感染するケースを主に想定)などの発生を前提とした「パンデミック感染症に対応する事業継続計画(BCP)」を対応マニュアルとして策定しました。

 これらのほとんどは、当時のWHO(世界保健機関)の基準にならった各感染拡大フェーズでの対応を定義付け、行動計画として策定されたものです。しかしそれから10年以上が経過し、新型インフルエンザなどの発生もなく、企業の経営陣や危機管理担当者、また社会全体でパンデミック感染症への危機感が薄れたことで、企業が策定した感染症対応マニュアルは危機管理ドキュメントの保管書庫に棚ざらしにされて、今日に至っていました。

 ですから、10年前に作られた行動計画が、今回の新型コロナウイルスにも相応しているのかといえば、そうではありません。新型インフルエンザの発生を前提に想定していた状況や社会環境、感染症の病像や感染拡大の予測・対処法は、現在行われている対応とは大きく異なっています。実はWHOでさえ、当時、海外渡航の禁止や国と国の往来抑制などを推奨していませんでした。

 今回は、前例がない事態の連続です。2009年新型インフルエンザ発生当時にBCP策定に携わっていた担当者もおらず、社内の“感染症対応の専門家”がいない組織がほとんどでしょう。陳腐化したマニュアルを読み返して、その中で決められた行動を実施することもなく、ほとんどの企業では、危機管理担当者が最初からパンデミック感染症危機管理を経営陣の“肌感”による指示でBCPを実施しているにすぎないのです。

 しかし、現在進行形のコロナ禍に対し、悠長に1年ほどの時間をかけて改めてBCPを策定している暇はありません。今、何をすべきか、何ができていないか、自社の対応状況を俯瞰で見て、足りない部分を認識し、優先度を考えて行動に移すことが求められています。