中心にあるのは政府のビル群だ。それらは装飾のないシンプルな構造になっている。国会議事堂も箱形のビルで、その両翼に議員会館がある。周囲には各省庁の合同庁舎、議員宿舎、公務員宿舎、商業施設が広がる。

「さて、新首都への交通はどうなるか」

 さらにスクリーンの画像が変わった。

「吉備高原からその北部を走る中国自動車道までは、30キロほどです。そして南には山陽自動車道が通ってます。これも同程度の距離です。山陽自動車道に沿って山陽新幹線も走っています。さらに、その手前には岡山空港があります。空港には20キロほどの距離です」

 岡山空港からは国内線では羽田、新千歳、那覇の各空港へ定期便が飛んでおり、国際線は中国や韓国とつながって年間120万人以上の利用客がある。日本の地方空港としては、建設当時の需要予測を超えた数少ない事例だ。

「将来的には飛行場を拡大し、国内線の便数をさらに増やす必要があります。近い内に具体的に方針が出るでしょう。また新首都と空港、岡山駅の間でリニアモーターカーの設置も計画しています。航空機、新幹線への乗り継ぎはさらに短時間となります」

 村津は聴衆に向き直った。

「吉備高原周辺は、まだほとんどが未開発地帯であり、これからの開発は比較的容易だと考えられています。ここに環状道路および環状鉄道を建設し、そこから都市高速道路を伸ばしてゆく。そうすれば山陽地方、山陰地方へと都市機能を発展させてゆくことも出来ます。また道路を南に延長すれば、瀬戸大橋に行き当たります。そもそも瀬戸大橋は山陽新幹線から四国横断新幹線へとつながる構想でした。その路線にも発展の余地があります。そうなれば、新首都は関西、山陽、山陰、四国、さらには九州をつなぐネットワークの結節点となる可能性を秘めています」

 会場は静まり返っている。

 村津は反応を促がすように軽く咳をして観客に目を向けた。

 突如として沈黙を破る拍手が鳴り響いた。