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8月27日 18時0分
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小康状態にある欧州情勢〜2011年同様の混乱は回避されるか?〜 - 村上尚己「エコノミックレポート」

8月15日レポートで欧州情勢についてお伝えしたが、この後も小康状態が続いている。7月末のECB(欧州中央銀行)のドラギ総裁による「あらゆる手段をとる」との発言をきっかけに、スペインなどの金利上昇に歯止めをかける政策が実現するとの期待が、市場の不安心理を沈静化させている。

・先週までにECBから公式な決定や発言はないが、「ECBが重債務国の金利に非公式な目標を定める」などの報道で、スペイン国債金利(対ドイツスプレッド)は、7月初旬以来の水準まで低下した。ただ、ECBによる国債購入に時間がかかるとの思惑で、週後半に再びスペイン国債は売られた。ギリシャの債務プランを巡る交渉を含め、水面下で政治的な駆け引きが続いているとみられる。

・この結果、現在、スペイン国債のスプレッドは約500bp(=5.0%)とかなり高い水準が続いている(グラフ参照)。米国株などが5月のギリシャ総選挙前の水準までほぼ戻り、事態正常化への期待が市場で広がっている。一方で、混乱の震源に近い欧州債券市場での、スペイン国債金利の高止まりは、そこまで状況は改善していないことを示している。


・欧州の債券市場では、ECBが実効性を持つ政策に踏み出せるのか疑念が強く、スペインやイタリア国債のショートポジションで、利益を稼げると判断している投資家がまだ多いとみられる。これは、投資家が、2011年秋口以降と同様の混乱が今年も起きることを想定しているためだろう。

・1年前に欧州情勢が秋口から混乱した経緯を改めて紹介しよう。2011年8月、ECBはSMP(証券市場プログラム)による国債購入策として、スペイン・イタリアなどの国債を買い取り対象に加えた。この措置で上昇していたスペイン国債金利は低下したが、9月になるとドイツ連銀出身のシュタルク専務理事がこの対応に不満を示し辞任した。ECBの不協和音に市場は目をつけ、債券市場ではスペイン・イタリアなどの国債への売り圧力が再び高まった(グラフ参照)。


・こうした中でECBがSMPの規模を縮小させたこともあり、イタリア・スペイン国債は更に上昇。その後、ギリシャ、イタリアでは首脳が辞任に至るなど政局が混乱し、国債価値・ユーロ体制存続に対する市場疑念に更に拍車がかかった。結局、2011年末に、ECBがLTRO(3年物資金大量供給)を採用し、国債市場が落ち着くまで、市場の混乱は収まらなかった。なお、2011年末から足元まで南欧諸国がマイナス成長に苦しんでいるのは、金利上昇と緊縮財政の結果である。

・欧州問題の沈静化を織り込みつつある米国などの株式市場と、それに懐疑的な欧州の債券市場、のどちらが正しいか。2011年の経緯をみれば、ECBによる政策が実現するかどうかが大きく影響することが分かる。具体的には、ECBが重債務国債の売りで稼ぐ投資家を負かす決意で国債を購入し、金利低下を実現できるかということである。為替市場での自国通貨高を防ぐために介入を行ったスイス中銀のように、「無制限で」国債購入を行うかどうかである。

・もちろん、ユーロ体制を保ったまま欧州経済正常化を実現するには、ECBの金融緩和政策だけで充分ではない。金融システム安定化枠組みの構築や財政政策の統合、が必要でこれらの政策実現はほとんど見えていないが、市場の疑念を落ち着かせる目先の対応策が必要ということである。

・ところで、ECBが、スペイン、イタリアなどの国債購入に慎重な一つの理由は、ユーロの枠組みが崩れるなどの政治事情が変われば、保有国債の価値が毀損する潜在的なリスクがあることだろう。日米など、普通の国のように財政政策を通じた所得移転が機能しないユーロ圏では、中央銀行が、自らの決断で財政政策の範疇に踏み出すリスクに迫られる面があるということである。

・つまり、(本来ならば)金融政策を自由に発動できる米日などよりも、ECBが直面している事態はより困難ということである。7月に、ECBが短中期金利をマイナスの領域まで低下させる、インフレリスクに目をつむる政策を決断せざるを得なかったのは、こうした事情があるためである。こうした状況を考えれば、ECBによる対応で仮に今後市場が落ち着いたとしても、為替市場でユーロ安が続く構図は変らないだろう。




(チーフ・エコノミスト 村上尚己)

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(マネックス証券)


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