はじめまして。林正愛(りんじょんえ)を申します。私はコミュニケーションエージェンシー、アマプロ株式会社を経営しています。仕事を通じてこれまでに多くの経営層の方に会い、インタビューや話を聞く機会がありました。女性経営者や女性幹部の方にお目にかかる機会にも恵まれました。この連載ではIT業界やそれに関わる仕事をして活躍している女性たちに焦点を当てながら、彼女たちの仕事観や仕事のやり方について紹介していけたらと考えています。ビジネスに限らずいまやあらゆる社会システムがITを抜きにしては立ちいかない時代になっています。そうしたスマート時代のスマート・リーダーシップをみなさんとともに考えていきたいと思っています。

「女性はすべてを手に入れられるか」論争

 今年6月アメリカでは、働く女性をめぐって、ある大きな論争が起こりました。

 プリンストン大学の教授でヒラリー・クリントン米国務長官の下で国務省政策企画本部長を務めたアン・マリー・スローターが、米アトランティック誌で「なぜ女性はすべてを手に入れられないのか」(“Why Women Still Can’t Have It All”)という記事を書いたのです。

Distinguished Women in International Affairs: Leading through Civilian Powerアン・マリー・スローター
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Sheryl Sandbergシェリル・サンドバーグ
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 彼女の夫は協力的だったものの、ティーンエイジャーの息子がいろいろ問題を抱えていました。国務省に18ヵ月勤めましたが、仕事を辞めて子育てに専念することを決めました。彼女は、職場や社会がワーキングマザーをサポートしていないと主張します。

 ただ、これに真っ向から異議を唱えたのが、フェイスブックのシェリル・サンドバーグです。彼女はフェイスブックのCOO(最高執行責任者)を務め、2人の子供を育てています。夫はIT企業を経営していて、家事は完全に分担してやっています。彼女は、女性はもっと積極的に自己主張し、家事をちゃんとシェアできるライフパートナーを見つけ、昇進や成功を目指し、キャリアをあきらめてはいけないと言います。