株式レポート
8月29日 18時0分
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一部のモノの価格しか下がっていない?〜デフレに関する誤解〜 - 村上尚己「エコノミックレポート」

昨日(8月28日)レポートでは、デフレを伴う経済状況では若者の雇用問題は改善しないという考えを紹介した。これに以下のようなフィードバックを頂戴した、「(デフレについて)実際に低下しているのは、ヒトの価値と一部のモノ(電化製品など)だけである。税金や社会保険料、公共料金はむしろ上がっているのだから本当のデフレといっていいのだろうか?」

・「すべてのモノ・サービス価格が低下しなければ、本当のデフレではない」というご認識なのかもしれないが、デフレとは「一般物価」の継続的な下落である。具体的には、消費者物価やGDPデフレーターなどで表されるが、消費などの経済活動全般の観点でモノなどの価格がどう動くかという事である。これらの価格指数をみると、日本は1990年代半ばからほぼ一貫して下落しているから「本当にデフレ」である(グラフ参照)。


・なお、消費者物価指数については、統計の算出方法から指数が高めに算出されることが知られている。消費者物価(コア)が春先に前年対比でプラスに浮上しているが、この程度の数字では、実際には消費者物価指数の下落トレンドが変わったとは、とうてい言えない。そして、足元では、コア消費者物価は再びマイナスの領域に入っている。

・また、「ヒトの価値(賃金)と一部のモノ(電化製品など)だけの価格が下落している」との事だが、本当だろうか?人口減少局面に入り自動車や家電などの耐久財の価格下落が進み、このためデフレが起きているという俗説もあるが、実際には民間が提供するサービス価格も低下している。

・消費者物価全体の推移と、耐久消費財の代表格である自動車と娯楽サービス(学習塾の月謝や映画館の料金など)の価格を1998年から比較すると、娯楽サービスの価格下落ペースは、自動車価格の低下より急ピッチに進んでいる(グラフ参照)。競争に直面している民間サービス業のコストは人件費だから、賃金の下落がサービス価格の低下として現れているということである。


・なお、公共料金のうち電気料金の値上がりが決まったが、これは燃料コストが上乗せされたことに加え、電力販売業が競争が働かない独占市場だからである。競争が働かない市場「だけ」、価格上昇が起きている現状は不健全ということは言えるだろう。ちなみに、消費者物価の中には「公共サービス」という分類があるが、運輸・通信分野の価格低下で「公共サービス価格」全般でみると、10年前から価格は低下している。

・結局、我々が消費するモノやサービスの多くは競争市場を通じて提供されているため、物価全般が上がるか下がるかは、経済全体の需要つまり経済成長率が十分伸びるかどうか次第である。もちろん、今後発生する消費税率引き上げに伴う価格上昇は、一時的な現象であり物価のトレンドはそれでは決まらない。




(チーフ・エコノミスト 村上尚己)

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(マネックス証券)


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