忠実に恋をすることに夢中になれなかったほど、自分の時間を無駄にしてしまったわけではない。壺がどんなであったかは、破片から充分にわかるものだ――、アダン・ド・ア・ラールの『緑陰劇』より。
 

 男と女は、ホテルのレストランで向かいあってテーブルに着いている。

 二人はステーキをオーダーし、ウェイターは焼き加減を訊いている。他にご注文は、と訊くウェイターに、二人は、それだけでいいと応える。ワインも頼まないのは、男は車で来ているからだ。しかも、夜っぴとい走りどおしで、昨夜は一睡もしていなかった。

「ねえ、他にも何か頼んだほうがいいんじゃない?」

 厨房に向かうウェイターの背中を窺うように見て、女が言う。

 そうだな、と男は応え、じゃあ、ウェイターを喜ばせてあげようと意味ありげに笑う。そしてウェイターを呼び戻して、告げるのだ。

「追加でオーダーを頼む……、部屋を予約したい」

 これが、映画『男と女』のエンディングだ。主人公の男女が結ばれる直前の会話を回想するシーンで映画は終わってます。とってもお洒落な構成。映画がどんな物語なのかは前回のイケテルカノジョを読めばわかります。たぶん。

 雪解けを待つのではなく春の陽が雪を溶かすように、男の情熱が、過去を忘れられない女の頑なな心を溶かして物語は終わった……、かのように思っていたら、実はそうではありませんでした。

 うまくいかなかったのだ、あの二人は。
  そして、あれから二人がどうなったのかを描いた作品が『男と女II』という映画。

 つまりは“続編”があるのです。では、続編がどんな物語かと言うと……、というようなことを言うと、何だか映画のコラムでも始めてしまったかのような気がするのは気のせいだろうか。