経営×ソーシャル
ソーシャルメディア進化論2016
【第12回】 2012年9月4日
著者・コラム紹介 バックナンバー
武田 隆 [クオン株式会社 代表取締役]

【石井龍夫氏×武田隆氏対談】
2015年、ソーシャルメディアと企業サイトの境界は消失する そのときに備えて

まだ検索エンジンも存在しなかったインターネット黎明期の1994年に、いち早く企業ホームページを立ち上げた花王株式会社。同社のホームページの変遷は、そのままインターネットとソーシャルメディアの進化過程とオーバーラップする。
今回は、2003年から同社のウェブ活用の戦略立案と企画運営の陣頭指揮をとってきた石井龍夫氏をゲストにお迎えする。企業ホームページは〈創世記〉→〈メディアの時代〉→〈ツール(検索)の時代〉とフェーズを進んできたと整理する石井氏は、ソーシャルメディアの力に後押しされた消費者が積極的に情報発信する現在のフェーズを〈場の時代〉と位置づける。
「いかにユーザーとつながるか」に焦点が移ったいま、企業にはどのような意識転換が求められているのだろうか。

インターネットによって、企業が「自社メディア」を持ち始めた

武田:「企業ホームページ」と呼ばれたウェブサイトが多く見られるようになるのは1997年だと記憶しています。花王さんの企業サイトは1994年に開設しています。世の中の流行より3年ほど早い。

石井龍夫(いしい・たつお)
花王株式会社デジタルコミュニケーションセンター部長。1980年花王に入社、販売部門を経験した後、本社事業部門でブランドマーケティング業務に14年携わる。事業部門では、メリーズ・ロリエ・ファミリー・キッチンハイター・マジックリン・ビオレ等のブランドマネージャーを歴任後、新規事業プロジェクトの責任者としてアジエンスのブランド開発とコミュニケーション立案を指揮した。2003年からweb作成部長として花王のweb活用の戦略立案と企画運営に携り、2012年には新設のデジタルコミュニケーションセンターの部長に就任している。また、近年では、日本マーケティング協会のマーケティングマイスターやインターネット広告電通賞の審査委員長といった職務にも携わっている。

石井:当時は、まだ検索エンジンもありませんでした。だから、企業がサイトを持ったからといって、お客様に見てもらえる保証はどこにもない時代でしたね。

武田:会社パンフレットをスキャンして、そのままアップしているサイトもありました。当時は、まだインターネットがメジャーなものになるかどうかの議論も二分されていて、否定派からは「一部のマニアックな人が無線のように使うもの」という声も聞こえていました。

石井:そういう意味では、花王は、当時から企業サイトに自社メディアとしての可能性を見出していたと言うことができるでしょう。

 これまでも長年、テレビや雑誌、新聞などにさまざまな広告を出してきましたから、15秒や30秒のCMでは伝えられないことがあると知っていました。そこで、企業サイトを持てば、私たちから直接お客様に向けて、充分な情報をお届けすることができるのではないかと思ったのですね。

武田:1993年、Mosaic(インターネット黎明期のウェブブラウザ)が発表されて、WWWが世界中に拡がりはじめました。それに伴い、個人がホームページを持ち、インターネットで情報発信することを「個人が放送局になる」と言いました。そのような時代、企業も放送局になれるんじゃないかと、花王は思い立ったわけですね。

石井:はい。すべてが初めての実験だったのでしょうね。それでも花王は最初から、お客様のための生活情報コンテンツは用意していました。ホームページが立ち上がった当時の画面のキャプチャを持ってきましたが、ここに「Hints for Your Life(ヒンツ・フォー・ユア・ライフ)」という文字があるでしょう?

武田:たしかに。自社のメディアを持つ情報発信者としての意識がすでにあったということですね。

1994年ごろの花王ウェブサイト画面(〈創世記〉)。

 

武田 隆(たけだ・たかし) [クオン株式会社 代表取締役]

日本大学芸術学部にてメディア美学者武邑光裕氏に師事。1996年、学生ベンチャーとして起業。クライアント企業各社との数年に及ぶ共同実験を経て、ソーシャルメディアをマーケティングに活用する「消費者コミュニティ」の理論と手法を開発。その理論の中核には「心あたたまる関係と経済効果の融合」がある。システムの完成に合わせ、2000年同研究所を株式会社化。その後、自らの足で2000社の企業を回る。花王、カゴメ、ベネッセなど業界トップの会社から評価を得て、累計300社のマーケティングを支援。ソーシャルメディア構築市場トップシェア (矢野経済研究所調べ)。2015年、ベルリン支局、大阪支局開設。著書『ソーシャルメディア進化論』は松岡正剛の日本最大級の書評サイト「千夜千冊」にも取り上げられ、第6刷のロングセラーに。JFN(FM)系列ラジオ番組「企業の遺伝子」の司会進行役を務める。1974年生まれ。海浜幕張出身。


ソーシャルメディア進化論2016

「ソーシャルメディア進化論2016」

⇒バックナンバー一覧