留学の積極支援と
学内グローバル化が進行

 グローバル人材育成の具体的な取り組みの方向性は、主に学生への留学支援と学内グローバル化の促進の二つに大別される。

 このうち、留学支援に関しては、いわゆる「内向き志向」が問題となって久しい。日本人の海外留学者数は、04年の約8.3万人をピークに、09年には1995~96年のレベルにまで落ち込んでいる(12年1月文部科学省集計)。

文部科学省 高等教育局 高等教育企画課 国際企画室長 坂下鈴鹿氏

 原因として考えられるのは、「語学力への不安や経済的な問題によるところが大きいと考えられます」と、坂下氏は指摘する。語学不安に対しては、大学によるシステマチックな支援が充実してきた。入学時に語学力を測るプレイスメント・テストを実施し、能力別少人数教育を採用する大学が少なくない。留学前の準備教育に力点を置く大学もある。また、留学先との単位互換を認めるなど、留学への障壁をなくす取り組みも見られる。留学を必修とする学部やコースの設置も最近の傾向だ。経済面に関しては、行政や各大学、経済界などの奨学金制度が支えとなっている。

 一方、学内グローバル化については08年、20年までに30万人の留学生受け入れを目標とする政府の計画の下、09年から文部科学省による拠点大学支援事業(グローバル30)が始まった。英語による授業のみで単位を取得できるコースが増設され、留学生受け入れ体制が充実、外国人教員の割合が増えた大学も多く、“キャンパスのグローバル化”の動きも見逃せない。

 さらに今年、文部科学省は、「グローバル人材育成推進事業」の公募を行った。前出のグローバル人材の3要素に加えて、これからの社会の中核を支える人材に求められる、幅広い教養と深い専門性、課題発見・解決能力、チームワークとリーダーシップなどの能力育成を目指し、大学教育のグローバル化を推進する取り組みが対象だ。

「40拠点の募集に対して、応募は150件を超えました。グローバル人材育成が、今や多くの大学にとって共通の課題となっていると感じます」と、坂下氏も手応えを語る。

 これまでにも、新興国支援を目的としたプロジェクトに参加するインターンシップや留学時に日本語や日本文化を現地で教えるプログラム、海外大学とのコンソーシアム形成による質の高い交流など、多彩な取り組みを実施している大学がある。こうした取り組み成果などは、各大学のウェブサイトなどからも確認できる。「進学先を選択する際には、ぜひ、グローバル化の取り組みも判断材料の一つにしていただきたいところです」(坂下氏)。