ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
出口治明の提言:日本の優先順位

3党合意はまだ半分も履行されていない

出口治明 [ライフネット生命保険(株)代表取締役会長]
【第60回】 2012年9月4日
著者・コラム紹介バックナンバー
1
nextpage

 8月29日、参院本会議は、野田首相に対する問責決議を、自民党等野党の賛成多数で可決した。わが国の詳しい内情を知らない外国人であれば、まさに「驚天動地」の気持ちがするだろう。なぜなら、この問責決議は、3党合意を批判し、消費税引き上げ関連法案を成立させた野田首相の責任を問うものであるからだ。

 世間の常識に従えば、3党合意の当事者である自民党と公明党は、問責決議に反対するか、少なくとも棄権に回らなければ、一貫した政策に責任を持つ公党とは言えないはずだ。公明党は筋を通した。ところが、自民党は党利党略を優先して、あろうことか、賛成に転じてしまったのである。増税法案を通したことで、一山超えたとタガがゆるんでしまったのだろうか。

増税でも、財政黒字化にはほど遠い

 問責決議が可決された2日後の8月31日、政府は中長期の財政見通し(経済財政の中長期試算)を、閣議決定した。それによると、増税を実現した後でも、2020年度のプライマリーバランス(PB、基礎的財政収支)は、成長シナリオで、8.5兆円の赤字、慎重シナリオで、15.4兆円の赤字が見込まれている。

 プライマリーバランスについて思い起こせば、2006年7月に、小泉内閣が「骨太の方針2006」で、2011年度にプライマリーバランスを黒字化する計画を掲げたが、達成は早々と断念されてしまった経緯がある。

 その後、2010年6月にトロントで開催されたG20では、2013年までに各国の財政赤字を半減させるという首脳宣言が採択されたが、日本は到底達成不可能ということで、唯一、例外扱いを受け、その代わりに当時の菅首相が国際公約として、日本独自の財政健全化目標を公表した。

 それは、プライマリーバランスを2015年度までにGDP比で半減させ、2020年度までに黒字化させるというものだったが、早くも2年で、わが国は国際公約の達成が不可能なことを内外に宣言してしまったことになる。増税法案が通ったくらいで一息ついているような余裕は、わが国には全くないのである。

1
nextpage
関連記事
スペシャル・インフォメーションPR
クチコミ・コメント

DOL PREMIUM

PR

経営戦略最新記事» トップページを見る

最新ビジネスニュース

Reuters

注目のトピックスPR

話題の記事

出口治明 [ライフネット生命保険(株)代表取締役会長]

1948年、三重県美杉村生まれ。上野高校、京都大学法学部を卒業。1972年、日本生命保険相互会社入社。企画部や財務企画部にて経営企画を担当。生命保険協会の初代財務企画専門委員会委員長として、金融制度改革・保険業法の改正に従事。ロンドン現地法人社長、国際業務部長などを経て同社を退職。その後、東京大学総長室アドバイザー、早稲田大学大学院講師などを務める。2006年にネットライフ企画株式会社設立、代表取締役就任。2008年に生命保険業免許取得に伴い、ライフネット生命保険株式会社に社名を変更、同社代表取締役社長に就任。2013年6月24日より現職。主な著書に『百年たっても後悔しない仕事のやり方』『生命保険はだれのものか』『直球勝負の会社』(以上、ダイヤモンド社)、『生命保険入門 新版』(岩波書店)、『「思考軸」をつくれ』(英治出版)、『ライフネット生命社長の常識破りの思考法』(日本能率協会マネジメントセンター)がある。

ライフネット生命HP

 


出口治明の提言:日本の優先順位

東日本大地震による被害は未曾有のものであり、日本はいま戦後最大の試練を迎えている。被災した人の生活、原発事故への対応、電力不足への対応……。これら社会全体としてやるべき課題は山積だ。この状況下で、いま何を優先すべきか。ライフネット生命の会長兼CEOであり、卓越した国際的視野と歴史観をもつ出口治明氏が、いま日本が抱える問題の本質とその解決策を語る。

「出口治明の提言:日本の優先順位」

⇒バックナンバー一覧