8月29日、参院本会議は、野田首相に対する問責決議を、自民党等野党の賛成多数で可決した。わが国の詳しい内情を知らない外国人であれば、まさに「驚天動地」の気持ちがするだろう。なぜなら、この問責決議は、3党合意を批判し、消費税引き上げ関連法案を成立させた野田首相の責任を問うものであるからだ。

 世間の常識に従えば、3党合意の当事者である自民党と公明党は、問責決議に反対するか、少なくとも棄権に回らなければ、一貫した政策に責任を持つ公党とは言えないはずだ。公明党は筋を通した。ところが、自民党は党利党略を優先して、あろうことか、賛成に転じてしまったのである。増税法案を通したことで、一山超えたとタガがゆるんでしまったのだろうか。

増税でも、財政黒字化にはほど遠い

 問責決議が可決された2日後の8月31日、政府は中長期の財政見通し(経済財政の中長期試算)を、閣議決定した。それによると、増税を実現した後でも、2020年度のプライマリーバランス(PB、基礎的財政収支)は、成長シナリオで、8.5兆円の赤字、慎重シナリオで、15.4兆円の赤字が見込まれている。

 プライマリーバランスについて思い起こせば、2006年7月に、小泉内閣が「骨太の方針2006」で、2011年度にプライマリーバランスを黒字化する計画を掲げたが、達成は早々と断念されてしまった経緯がある。

 その後、2010年6月にトロントで開催されたG20では、2013年までに各国の財政赤字を半減させるという首脳宣言が採択されたが、日本は到底達成不可能ということで、唯一、例外扱いを受け、その代わりに当時の菅首相が国際公約として、日本独自の財政健全化目標を公表した。

 それは、プライマリーバランスを2015年度までにGDP比で半減させ、2020年度までに黒字化させるというものだったが、早くも2年で、わが国は国際公約の達成が不可能なことを内外に宣言してしまったことになる。増税法案が通ったくらいで一息ついているような余裕は、わが国には全くないのである。