前回までに「市場主義1.0」「2.0」「3.0」と順にみてきたが、そこで明らかにしたように「3.0」は「1.0」と「2.0」の双方の限界を同時に乗り越えようというモデルであり、その意味で、先進諸国における“経済社会モデルの現時点で見通しうる到達点”ということができる。

これに対しては反論があろう。世界全体を見渡した時、新興国にパワーがシフトしており、先進国はおしなべて低成長が続いている。少なからぬ新興国が採用しているのは、国家が産業の発展に積極的に介入を行う「国家資本主義」モデルであり、それは経済システム面での市場原理の重視を基本原理とする「市場主義」への挑戦といえる。

さらには、リーマンショックを経て、市場メカニズムには根本的な欠陥があると主張する声が大きくなり、世界は再び規制強化・国家介入の時代に入ったとする見方も台頭している。そうしたなかで「国家資本主義」を採用する新興国が、グローバル経済でのプレゼンスを高めており、好むと好まざるとにかかわりなく、わが国も経済活動への積極的な国家介入を行わなければ生き残れない、という意見も出てきている。

国家資本主義とは

 国家資本主義についての体系的な書物をあらわしたイアン・ブレマーによれば、国家資本主義とは「政府が経済に主導的な役割を果たし、主として政治上の利益を得るために市場を活用する仕組み」である(『自由市場の終焉』日本経済新聞出版社)。

 その典型例が中国である。1978年の「改革開放」以来、中国は「社会主義モデル」を放棄し、経済面での市場原理の活用を進めたが、それは経済システム面での政府介入の最小化を目指す「市場主義」の方向ではなかった。あくまで共産党支配体制を維持することを目的に、市場原理を活用して富を増やし、人民の不満を解消しようというものである。