株式レポート
9月3日 18時0分
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「追加金融緩和の可能性は高まった」の読み方 - 村上尚己「エコノミックレポート」

・先週末(8月31日)、ダウ平均株価は90ドル高と反発した。注目されたジャクソンホールにおけるバーナンキ議長の講演が好感され、金融緩和期待が米国株市場を支えた。メディアでは、議長の講演をうけて「追加金融緩和QE3の可能性は高まった」など市場関係者の声が掲載されている。

・ただ講演の中身を普通に読めば、議長の発言の中に特段目新しい内容があったわけではない。これまでの発言やFOMCにおける議論をほぼ踏襲した内容である。議長のメッセージは、「失業率など労働市場の回復は依然かなり緩慢。このままなら追加金融緩和を行う」である。「議長発言で、追加金融緩和の可能性が高まった」という見方は、相場の後講釈の面も大きい。

・つまり「金融緩和は、今後の雇用統計の数字次第」ということである。8月23日レポートで紹介したが、前回(8月月初)のFOMCの議論で、多くのメンバーは、(1)金融緩和(=追加の資産購入)に前向き、(2)金融緩和を見送るにはかなりの景気回復(労働市場など)が必要、と認識していることが判明している。先週末のバーナンキ議長の講演内容が、「これまで以上に追加金融緩和に踏み込んだ」内容とは言い難いだろう(もちろん講演は、金融緩和策の効果やリスク、米経済の状況などについて、興味深い内容ではある)。

・2010、11年のジャクソンホールでの議長講演の後、秋に米金融政策が変更され、今回も同じ連想からこのイベントが注目されていた。ただそもそも、毎年この講演で決定的な証言がでるわけではない。継続的にFRBは経済情勢を踏まえて金融政策を判断しているのだから当然である。過去2年春先以降、米経済の減速とともに市場が混乱し、夏の終わりの時期のFRBのメッセージが、株式市場の転換点の時期に重なった面もある(グラフ参照)。今年も同様のパターンで、米FRBの金融緩和が近づいているということだろう。


・そして、追加金融緩和が迫る中で、為替市場ではドル安・円高が進むシナリオが、メディアなどで語られている。特に、先週末のバーナンキ議長の言葉尻について表面的にとらえる市場参加者ほど、「円高リスク」を特に強調する傾向があるようにみえる。

8月24日レポートで、FRBの金融緩和がドル円に及ぼす影響について以下の考えを紹介した。(1)金融緩和の強化は通貨安要因、一方(2)米日金利差縮小余地はかなり小さい(グラフ参照)、(3)ドル円はFRBの金融政策だけで決まらない、(4)円が過大評価されているとIMFが公式に表明、(5)日銀による金融緩和強化は可能、という理由で、FRBの追加金融緩和があっても円高に必ずしも進まない、と考えている。


・こうした中で、9月2日(日)日経新聞(3面)には、「(QE3は米金利の低下と円高・ドル安を促す可能性があるため)日本株は大きく動くことはない」、という筆者のコメントが掲載されている。ただ実際には、いくつかリスクシナリオをお答えしたら、「円高ドル安リスク」だけが紙面の関係で取り上げられたようで、実際には円高が進むリスクが大きいとは考えていない。

・ところで、米国の7月の経済指標は、金融緩和が不要というほどではないが、4―6月から改善を示すものが多かった。一方、同月分の日本の主要な経済指標の多くが弱い結果だった。特に7月鉱工業生産は、生産指数の下方トレンド入りを示している(グラフ参照)。デフレという異常な状況であり、更に足元の景気の方向性でも、米国経済>日本経済という構図となっている。


・こうした状況にあって、仮に、今後日銀だけが金融緩和を見送れば、それは円高が進んでも仕方がない。「デフレ⇔円高のスパイラルが一段と深刻化することを、日本は自ら好んでいる」と市場は受け止めるからである。




(チーフ・エコノミスト 村上尚己)

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