戦略的な拠点再編により
集積が進む自動車産業

 国内外の生産に復調の兆しを見せる自動車産業では、拠点および関連企業再編を通じて技術競争力の向上を目指す動きが目立つ。東北地域で拠点展開する自動車メーカーは、コンパクト車を主力とした経営体制を目指して、東北現地調達化センターの新設や、人材育成施設の開校(13年4月予定)などの拠点戦略を進めている。

 この背景には、メーカーの進出を機に、地元の企業と自治体、教育機関が協力し、自動車産業技術に対応する人材育成を推進してきた努力がある。地元企業はもとより進出企業にとっても高度な人材を確保しやすい環境を整えた結果、東北は中部、九州に次ぐ生産拠点として新たな産業集積を生みつつある。こうした再編を通じて技術競争力の向上を目指す動きは、中国地域など他の地域に拠点を持つメーカーでも行われている。

新規参入の期待が大きい
医薬・医療機器分野

 医薬品・医療機器関連産業や食品産業などの内需型産業は、設備投資を堅調に続けている。

 医薬・医療機器分野は、医療技術の高度化や、健康・医療・介護等に関わるサービスの他、ものづくりの分野でも医療機器、介護用品、健康食品など、関連する業界は多岐にわたる。10年に策定された新成長戦略においても、七つの戦略分野の一つに「ライフ・イノベーション(医療康・介護・健康の産業化)による健康大国戦略」が挙げられており、成長産業と目されている。重点的な産業分野に位置付けている地域も多く、関連企業や異業種の新規参入が期待されている。

地域のブランディングが企業戦略に直結した
誘致政策の展開に

 一方、食品関連は大手の工場再編の動きの他、地域ブランドを活用した設備投資が各地で現れ始めている。

 ある中堅冷凍食品メーカーは、「きれいな雪解け水」という地域の特徴に注目し、主力商品である冷凍うどんなどの製造工場を水資源で有名な都市の工業団地に新設稼働した。

 こうした地域で培われた固有の資源(自然、歴史、文化、産業、人材、特産品など)を生かし、ブランドとして市場への情報発信を行うなど地域の付加価値を高めるブランド戦略も、地元産業の振興につながっていく。自らの地域の優位性を打ち出すとともに、企業戦略を深く理解しニーズに対応していく。そうした誘致政策を展開する地域に、企業の注目は集まるだろう。