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「全員仲良し」なんてありえない

「職場での人間関係」に関するある調査では、84%もの人が問題を抱えているというデータがあります。さらに、転職者に対する別の調査では、「人間関係が転職のきっかけになった人」が、53%にも及んでいます。

「うちの会社は人間関係がよくない」という話をよく聞きます。逆に、「うちの会社は人間関係が最高だ」「こんなに働きやすい職場はない」という話は、滅多に聞きません

なぜでしょう。それは、「すべての職場は人間関係がよくない」からです。

私は、今まで10ヵ所以上の病院で勤務してきましたが、「人間関係がとてもよかった」という病院は、1ヵ所もありませんでした。どんな組織でも、数十人から数百人のバラバラな性格の人が集まっているので、全員が仲良しというのは、ほぼありえない話です。

たとえば、小学校、中学校、高校のクラスを思い出してみましょう。40人ほどのクラス全員が仲良しで、いじめや仲間はずれなどまったく存在しない、人の悪口を言う人も誰もいない。そんなクラスが存在したでしょうか。

あなたは自分の職場を「人間関係が険悪」と思うでしょうが、多くの職場を見てきた私から言わせると、それはごく「普通」のことです。「職場の人間関係はよくない」のがスタンダードなのです

ですから、「職場の人間関係が悪い」という理由で転職すると、次の職場も「人間関係が悪い」、また次の職場も「人間関係が悪い」と、何度転職しても、理想の職場は見つからないはずです。考え方を変えるべきなのです。

精神科医が「職場の人間関係は悪くて当然」と断言するワケPhoto by Adobe Stock

職場の人間関係は深めるな

対人関係の三重円」という考え方があります。

円の一番内側が、「重要な他者」である家族や恋人、親友。円の2番目が、友人や親戚。円の一番外側が「職業上の人間関係」です。

つまり、「職場の人間関係」は、心理学的に見ると重要ではないのです。それなのに多くの人は、「職場の人と仲良くなる」ことを重視し、「友人」と同レベルに親密度を深めようと膨大な時間と精神エネルギーを費やします。結果として、精神的に疲弊し、「今の職場を辞めたい!」と思うのです。

「まったく話をしない」「目も合わせない」「相手を引きずり下ろすための嫌がらせが日常茶飯事」など、仕事に支障をきたすと困りますが、職場の人間関係は最低限のコミュニケーションがあれば十分なのです

社会人になってすぐの人は、それまでの人間関係を引きずります。たとえば、「高校、大学のクラスメイト」や「部活の仲間」のイメージで、「職場の人間関係」をとらえます。ですから、職場の仲間とも、今までの「友人」と同じような「深い関係」を築こうとする。結果としてそれは実現されないので、悩み、疲れるのです。

職場の人間関係は、もっと「ドライ」でいいのです

職場の人と「仲良くなろう」という意識を捨てましょう。「仲良くなる」や「好かれる・嫌われる」ではなく、報告・連絡・相談など仕事に必要なコミュニケーションをすることのほうが、100倍、1000倍重要です