コロナ禍や自粛生活などの「環境の変化」により、多くの人が将来への不安を抱え、「大きなストレス」を感じています。
 ストレスを溜め込みすぎると、体調を崩したり、うつなどのメンタル疾患に陥ってしまいます。
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「眠れない」を放置するリスク

そもそも、「眠りの質が悪い」とはどういうことでしょうか。

脳と体には「睡眠」というシステムがあります。疲労回復、免疫力アップ、新陳代謝、細胞修復、脳内の情報の整理などの役割を持ちます。睡眠は生物にとって絶対に必要な機能なのです。

「眠れない」というのは、生物にとってかなりの異常事態です。不規則な生活やストレスなどによって、「正常な睡眠機能」が破綻したということです。

人間の体には、「自然治癒力」が備わっています。昼もある程度働きますが、免疫活動が活発になる「睡眠中」にこそ自然治癒力は働きます。睡眠時間が短かったり、睡眠の質が悪かったりすると、自然治癒ができず、やがて「病気」を発症します。

「眠れない」というのは体からの「警告」です。その警告に耳を傾け、不摂生な要素を取り除かないと、あなたはメンタル疾患や心筋梗塞、脳卒中などの身体疾患、あるいは突然死や過労死のリスクを抱えることになります。「眠れない」は、「健康」と「病気」の中間、「未病」の状態なのです。

慢性的な不眠を抱えている人といい睡眠がとれている人とでは、うつ病の発症率は40倍の違いがあります。認知症のリスクの差は5倍にもなります。

あらためて、質の悪い睡眠を放置すると、極めて高い確率で病気になることを知っておきましょう。逆にいうと、生活習慣さえ改善すれば、健康で長生きができるのです。

「死んでも睡眠は削るな!」コロナ禍に精神科医が断言するワケPhoto: Adobe Stock

睡眠不足の3大デメリット

睡眠不足が健康に悪いというのは知っていても、本当の睡眠不足の恐ろしさを多くの人は知りません。睡眠不足のデメリットは、大きくまとめると3つあります。

(1)病気になる(寿命が縮む)

睡眠不足による病気のリスクを、たくさんの研究が示しています。睡眠6時間以下の人は、そうでない人と比べて、がんが6倍、脳卒中が4倍、心筋梗塞が3倍、高血圧が2倍、糖尿病が3倍、風邪が5倍のリスクです。死亡率が5.6倍も上がるという研究もあります。

健康に悪い生活習慣は「喫煙」が一般常識ですが、「喫煙よりも睡眠不足のほうが健康に悪い」と主張する研究者も多くいます。

若い頃は大丈夫と思っていても、そのときの睡眠不足が、10~20年してから「生活習慣病」としてあらわれてきます。

(2)仕事のパフォーマンスが下がる

睡眠不足の人は気づいていませんが、睡眠を削ると脳のパフォーマンスは劇的に下がります。6時間睡眠を14日間続けると丸2日徹夜したのと同程度の認知機能になります。つまり、毎日6時間睡眠を続けている人は、「毎日徹夜明けで仕事をしている状態」で仕事をしているということです。

睡眠を削ると、集中力、注意力、判断力、実行機能、即時記憶、作業記憶、数量的能力、数学能力、論理的推論能力、気分、感情など、ほとんどすべての脳機能が低下することが明らかになっています。

睡眠不足の人は、本来持つ能力の3~5割減くらいの能力で、毎日仕事をしているのです。

(3)太りやすくなる

「睡眠を削ると太る」というリスクもあります。ダイエットを失敗する人が多いのは、睡眠不足の状態でダイエットをしているからです。

睡眠時間と肥満についての研究では、睡眠時間5~6時間で1.2倍、4~5時間で1.5倍、4時間以下では1.7倍も太りやすくなるそうです。

睡眠不足の人は、1日385キロカロリー余計に摂取している」というデータもあります。睡眠不足の人は、猛烈に食欲がアップします。

睡眠不足によって、食欲増進ホルモンのグレリンの分泌が増え、食欲抑制ホルモンのレプチンが減り、ショ糖、脂肪、ジャンクフードの摂取欲求が増えます。食欲が増え、甘い物や油っぽいものを食べたくなるのです。

睡眠不足になると、体は「危険性」を感じて、必死でエネルギーを蓄えようとするのです。痩せたければ、「ダイエット」の前に「睡眠」です。