新興国投資 2012年9月7日

[木村昭二のどんとこい!フロンティア投資]
暑いぜ砂漠、熱いぜエジプト経済!
個人投資家は投資不適格の今こそ注目だ

失業率の高さや貧富の格差などの不満から市民が蜂起、29年間の独裁だったムバラク政権を倒した「エジプト革命」から、1年半が過ぎた。もともとエジプトは“ポストBRICs”として期待されていた経済発展国。欧州が債務問題等でそれどころじゃない今こそ、投資のチャンスがあるかもしれない。海外投資の第一人者・木村昭二が、現地へ飛んだ!

約1472万人が密集して暮らす首都カイロの街並み。世界18位の大都市は、確実に活気を取り戻しつつあるように見える。「もっと豊かになりたい」という欲求が革命の原動力だっただけに、見込みはある (Photo:©木村昭二)

革命前夜のGDP成長率は7.6%だった
経済が再び上昇に転じる理由と兆候も!

 チュニジアの「ジャスミン革命」に触発されたエジプトの若者たちが、反政府デモを組織。29年間の長きに渡り権力の座に君臨したホスニー・ムバラク氏の独裁政権を倒した「エジプト革命」が起きたのは、今から1年半前の2011年1月でした。

 背景には、若者層の高い失業率、物価上昇、貧富の格差拡大などによる不満の鬱積がありました。しかし、国全体として経済がうまくいっていなかったかというと、実はそうではなかったのです。

 ムバラク政権は2000年から経済の自由化を進め、世界金融危機前の2006~2008年にかけては7.6%の成長率を維持していました。1人当たりの国内総生産(GDP)は革命前の直近10年で5675ドル→7359ドルと伸びています。ということは、やはりどこかに富が偏っていたということになります。

 投資の世界ではこうした偏りはいずれ解消されるものとして、エジプトに注目していました。BRICsの次に急成長が見込める国々の括りとして「NEXT11」「MENA」「CIVETS」などがありましたが、エジプトはいずれにも名を連ねています。

 つくづく「世界金融危機さえなければ、今ごろは…」と思わずにはいられないのですが、「エジプトはこの難局を克服していずれは成長軌道に戻る」と予測するならば、争乱で落ち込んだタイミングは“これから投資する者”にとってはチャンスと言えます。

 実を言うと、著者は3年前にエジプトの現地証券会社に口座を開設していました。株を売買するにはエジプトポンドに替えなければならないのですが、対ドルでの値動きがわからず入金を躊躇していたところに、あのような事態となり、危うく損失を免れたのでした。

 エジプトの主な産業は、観光、運河、石油、出稼労働者からの仕送りですが、争乱があったことで観光は大打撃、ほかも世界的な景気後退で芳しくありません。

 こうしたこともあって、昨年はS&Pがエジプトの投資格付けを2回格下げし“B=投資不適格”としました。これはアルゼンチンやカンボジアと同じランクです。経済成長率は-0.5%。新政権の先行きも不透明で、これでは機関投資家は手が出せないでしょう。

 けれども、個人投資家の強みとは、誰に気兼ねすることなく自己責任でリスクが取れることです。10-20倍を狙うダイナミックな投資を考えるなら、格付けが「投資適格」を回復してからでは遅いのです。機関投資家が乗り込んでくる前に、仕込みを終えていたいところです。

 実際、希望を感じさせる兆候はあります。IMFは今年のGDP成長率を1.5%、2015年には3.3%まで回復する予測しています。

 また、Financial Times紙は8月末に「エジプトの株価指数EGX30は今年に入って45%高の回復を見せており、これはベネズエラの151%に次ぐ世界第2位の好成績。外国人投資家は未だ躊躇しているものの、国内投資家は新政権と軍の紛争は避けられると見て海外から資金を戻しており、これが株価を押し上げている」と報じました。

エジプトの代表的な株価指数「EGX30」の価格推移。年初3679.96から始まり、3月に高値と付けた後、7月に4031.60まで調整。しかし、底打ち反発に転じ現在は年初来高値を更新して5459.92 図版作成:ザイ・オンライン編集部

 


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橘 玲(Tachibana Akira) 作家。1959年生まれ。早稲田大学卒業。「海外投資を楽しむ会」創設メンバーのひとり。著書に『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』『(日本人)』(幻冬舎)、『臆病者のための株入門』『亜玖夢博士の経済入門』(文藝春秋)、『黄金の扉を開ける賢者の海外投資術』(ダイヤモンド社)など。
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