景気が鈍化する中国で、中国ビジネスに音を上げる経営者が続出している。「この先、中国で商売するのは困難だ――」、そんな悲観論が労働集約型の製造業のみならず、ホテルや飲食などのサービス業からも上がっている。中国ビジネスに旨みはなくなってしまったと訴える、上海の飲食業界をクローズアップした。

倍々ゲームのコストと
過当競争に上がる悲鳴

 中国人Wさんは最近、浙江省で長年経営していた飲食店を閉じた。最大の理由は2010年以降、3倍にも跳ね上がった人件費である。それに続くのが賃料の高騰だ。ここ数年で2万元から3万元へと5割増しになり、そのうえ原材料価格も上昇した。

 コストの上昇は販売価格にも連鎖する。どうしたって単価を引き上げないことには、バランスが取れない。早速、メニューの表示価格を改訂しようと取りかかるが、ところがこれがそう簡単にはいかない。

 周辺の同業者がどんどん値下げ攻勢を仕掛けて来るのだ。しかも、日本で見るような1割引き、2割引きというようなものではない。いきなり「半額」あるいは「それ以下」をぶつけてくるのだ。

「もはや客の奪い合い。同業者は半額に近いディスカウントを可能にするクーポン券を発行して客を囲い込む。こんな環境でまともな商売ができるわけがない」と、Wさんは白旗を振る。

 他方、中国の飲食業経営は行政がらみの費用負担にも泣かされている。

 消防局は「これも問題、あそこも問題」と店舗の構造上の問題を指摘する。その基準は「厳しくて守れない」という業者泣かせのもので、解決するには賄賂を贈るしか方法はない。

 衛生局は「果物を扱うなら専用の部屋を作れ」という基準を突きつける。ガラス張りの専門のスペースを確保するなら、果物をカットしてもいい、というのだ。