バッテリーに関しては定置型もあるが、電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHV)を電力需給の調整に使う、ビークル・ツー・グリッドという考え方もある。EVやPHV側はグリッドと情報をやりとりするプロトコルを共有する。その意味で、自動車は今後ますます家電とクロスオーバーしていくだろう。

賢く効率的な、
総合的エネルギーマネジメント

 一方で、私たちが使うエネルギーは電気だけではない。特に家庭においてはエネルギー需要の半分以上が、給湯や暖房のようなせいぜい50度までの低温の熱である。これには発電廃熱をはじめさまざまな廃熱、太陽熱、バイオマスが使える。

 従来の大規模集中型の火力・原子力発電では、電気として投入エネルギーの平均4割以下しか使えないのに対して、需要地の近くに中小規模の発電所があり、電気と熱の両方を分配するシステムであれば、8割程度のエネルギーが使える。日本でも都市部にこうした地域熱供給(あるいは地域冷暖房)システムを備えている地域があるが、北欧やドイツ、オーストリアなどでは都市郊外の発電所から電気と熱を地域全体に供給する仕組みが普及している。熱のネットワークには、バイオマスボイラーや太陽熱、あるいは工場廃熱などが接続されていることもある。この地域熱供給システムにも、ICTを活用した需給コントロールシステムが使われるようになってきた。いわば熱のスマートグリッドである。さらに公共交通機関や水までも、このシステムに取り込もうという考え方がある。

 そう遠くない将来、再生可能エネルギーを含む分散型のエネルギーシステムと総合的なエネルギー管理システムの導入によって、それぞれの地域が電気や熱をある程度自給しつつ、天然ガスタービン発電や比較的安定した洋上風力発電、地熱発電などがベース電力としてバックアップする、賢く高効率なエネルギーシステムが出来上がっていくことだろう。

小澤 祥司 (おざわしょうじ)
環境ジャーナリスト。静岡県生まれ。再生可能エネルギーや生物多様性、持続可能な地域づくりをテーマに取材・執筆活動。著書に『コミュニティエネルギーの時代へ』(岩波書店)、『飯舘村 6000人が美しい村を追われた』など。近著に『減電社会』(仮、講談社)。