アメリカ政治の躍動感

 現在時刻は2012年9月6日24時ちょうど。ついさきほど、アメリカ合衆国マサチューセッツ州ボストン、ケンブリッジにある自宅に戻った。8月末から住む、家具も置かれていない空っぽの部屋。ここから新しいストーリーが始まる。ハーバード大学ケネディースクールにフェローとして赴任し、2週間が経った。

「Ask What You Can Do」<br />自分に何ができるかを問え多くの学生がスクリーンに釘付けになっていた。Photo by Y.K.

 2時間前、私はハーバード大学ケネディースクールの中にあるJohn F. Kennedy Jr. Forumというロビーにいた。学生や教員約500人と一緒に、スクリーンの前でオバマ大統領の演説を見守っていた。

 スクリーンには、CNNの生中継が流れていて、ケネディースクールの教授で、CNN Senior Political AnalystのDavid Gergon氏が解説をしている。私たちにとってはおなじみの顔だ。米南部ノースカロライナ州シャーロットで開催された民主党大会の会場は歓声で包まれていた。

 ミッシェル夫人に紹介され、オバマ大統領が登壇する。二人は抱き合い、何かを呟きあう。

「あなた、頑張って――」、「うん、見守っていてね」

 そんな会話をしているのだろうか。二人はアイコンタクトで互いが歩んできた道を、そして育んできた愛を、最高の舞台で確認し合っていた。少なくとも私には、そう見えた。

 オバマ大統領は演説に入る。直前に行われたバイデン副大統領の演説を聞きながら、私は「いまオバマさんはどんな心境なんだろう」と想像していた。なぜか私は緊張してしていて、体の芯から汗が噴き出てきていた。

 オバマ大統領は緊張する様子もまったく見せず、冷静沈着そのものだった。一つ一つ、丁寧に言葉を選びつつも、強弱をつけながら、観衆たちの心を躍らせた。同氏が最もメッセージを届けたい中産階級を意識しながら、歯切れよく、力強く言葉を重ねていく。