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安価な労働力より
経済成長に不可欠なもの

 経済は成長率だけでは理解できない。国民経済の活動を決定づけるものとして実体資本、人的資本、技術・知識などの生産投入要素のほか、制度資本(編集部注:教育や医療、金融、司法、行政などを指す。経済学者の故宇沢弘文が、社会的共通資本の一つとして提唱した)がある。

 安価な労働力は、短期的には制度資本の不足を補う上で大きな効果を発揮する。だが制度資本の本質的な代替品には、永遠になり得ない。これこそが中国経済が将来あるいはすでに、必然的に直面するボトルネックであるのだ。

 中国は必然的に内需型のサービス業に転換していく。だがサービス業の発展は、制度資本に依存する率がより高い。例えば言論の自由は、制度資本によって生み出される重要な要素の一つだ。メディアの言論が制限を受ける度合いが大きくなれば、都合の良い情報ばかりが報道され、都合の悪い情報が報道されることはなくなる。そうなった場合、私たちが受け取ることのできる情報の深さや広さの度合いは大幅に後退し、市場参加者が得る情報の真実性に大きな偏りを生じさせる結果となる。客観性が乏しくなれば、市場は混乱するばかりだ。

 このように、無形の商品を取引対象とするサービス業が、言論の不自由な国家で発展することは困難なのである。かつて複数の国家にまたがった大規模研究において、新聞メディアの自由が最も進んだ国のサービス業が、最も発展しているとの結果もあった。

 中国がもし金融サービス業のような、より高度な次元のサービス分野で発展しようと考えるのなら、対応する法律と情報提供の枠組みが必要不可欠だ。人々が司法に頼ることができず、正確な情報を入手する手段にも欠けているような社会では、高度なサービス業における取引意欲は低下することになる。金融サービス業発展の核心は、資産の流動性を高めるとともに、資金の使用効率を向上させ、創造的価値を生み出すことである。そこに制度資本が持つ長期的な価値が意味を成すのだ。