打算や思惑のない言葉こそ、伝わる

打算や思惑のない言葉こそ、伝わる<br />【(『超訳ニーチェの言葉』)白取春彦×ジョン・キム】(後編)

白取 『超訳 ニーチェの言葉』がどうしてあんなに売れたのか、と聞かれて、こう答えたことがあるんです。使った言葉の裏側に、打算や思惑がなかったからだ、と。それは、僕が子どもっぽいからなんですが(笑)。ずるい大人ではなかった。ずるい人間は、言葉だって、行動だって、打算的でしょう。

 僕の場合、計算すると疲れるんですよ。というか、計算外れが多い(笑)。女性だって、計算づくで落とそうとしたって無理。真正面から当たるしかない。そうすると、必ずOKしてくれます。

キム 自分が心から伝えたいこと、表現したいことが、結果的に一番、人に伝わるような気がします。もし表現の中に偽りがあれば、自分の未熟さに自分は気づくと思うんです。それを読む人も感じる。その意味では、本当は最も効果的なのは、打算的にならないこと、なんですよね。

 でも、そのためには意識的な努力が必要になってくると思うんです。そこで、『媚びない人生』で使ったのが、自然体という言葉であり、野良猫という言葉でした。それは、他者に対して排他的という意味ではまったくないし、組織のルールにすべて従わないという意味でもない。確固たる自分を構築した上で、自分の視点を持って生きていく。それが何より大事だと思うんです。

 打算的に考えないことが、最終的に自分に一番貢献する。打算の次元を高めていくと、そういうところに到達できるかもしれない(笑)。

白取 おっしゃる通りです。キムさんは本当に説明がうまいですね(笑)。本心から物事を言うと、一番さっぱりすると思うんですよ。相手も自分も。そういうことです。

キム 実際、『媚びない人生』を作るときに感じたのは、自分がちゃんと最善を尽くして出した表現なのかどうかが何より大事だ、ということでした。だからこそ、それを読んだ人が、たとえ一人でもいいので、深く理解してくれて、自分の人生を革命的に変えることができたとしたら、僕にとってはうれしいのだと思いました。

 現実的には、精神性の高い、抽象度の高い言葉が並んでいるので、すぐ実践の中で生きてこないかもしれない。でも、身体の、あるいは精神のどこかに、何かの表現が残っていて、それがじわじわっとにじみ出てくるような効果が、本人も知らないうちに出るのが、一番の理想です。

 おそらく効果の検証はできないと思いますが、一人でも多くの人が、自分の人生に生かせるものを見つけてもらえたなら、それ以上の喜びはないです

 あ、もちろん100万部なんていう、とんでもない部数も、うらやましいですが(笑)。

白取 大変ですよ。税金、すごいんですから(笑)。笑いごとではなく、ホントにすごいんです。予定納税も来ますからね。僕は結局、高い車は買えなかった。税金が怖くてお金が使えない。おかしな話です。

キム でも、新作も魂が籠もっています。

白取 そう言っていただけると、うれしいです。読者の方には、ゆっくり読んでほしいですね。一気に読む必要はなくて、ゆっくり読んでほしい。いろんなパターンの文章があるんです。詩のような文章、話しかけるような文章。今日は2、3読んで、明日また2、3読んで。そんなざっくばらんに読んでもらえれば。僕自身、古典ばっかり読みますが、そういう読み方をしますから。

キム 本は自分がいなくなっても生き続けます。それを考えると、表現することは、怖さもあるし、責任も感じます。準備をしっかりして、本は出していかなければいけないと、今回、本を出して痛感しました。

 やっぱり著者としては、読者の視点の転換を促せることがうれしい。ただ、そのためには、自分自身が進化していかないといけないですよね。そうでなければ、新しい視点の提供はできない。脱皮し、超越し続けないといけない。書き続ける人の凄さを思います。


 
打算や思惑のない言葉こそ、伝わる<br />【(『超訳ニーチェの言葉』)白取春彦×ジョン・キム】(後編)

 

たちよみページあります!


【ダイヤモンド社書籍編集部からのお知らせ】

打算や思惑のない言葉こそ、伝わる<br />【(『超訳ニーチェの言葉』)白取春彦×ジョン・キム】(後編)
定価:1,365円(税込)
四六判・並製・256頁 ISBN978-4-478-01769-2

◆ジョン・キム『媚びない人生
「自分に誇りを持ち、自分を信じ、自分らしく、媚びない人生を生きていって欲しい。そのために必要なのは、まず何よりも内面的な強さなのだ」

将来に対する漠然とした不安を感じる者たちに対して、今この瞬間から内面的な革命を起こし、人生を支える真の自由を手に入れるための考え方や行動指針を提示したのが本書『媚びない人生』です。韓国から日本へ国費留学し、アジア、アメリカ、ヨーロッパ等、3大陸5ヵ国を渡り歩き、使う言葉も専門性も変えていった著者。その経験からくる独自の哲学や生き方論が心を揺さぶられます。

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