橘玲の日々刻々 2012年9月10日

[橘玲の日々刻々]
愛国はめんどくさい

 竹島と尖閣諸島の領有権問題が、暑い夏をさらに不愉快にしています。

 領有権というのは、「なわばり」のことです。この問題がやっかいなのは、ヒトのOSが「なわばりを侵されたら激昂せよ」とあらかじめプログラミングされているからです。

 なわばりによって自分と家族の生存領域を確保するのは、哺乳類だけでなく、昆虫や爬虫類、両生類、魚類、鳥類にも共通する進化の大原則です。このプログラムは生き物が子孫を残すのにものすごく有効な戦略だったので、なわばりを守れないような個体は淘汰されて進化の歴史から消えてしまったのです。

 しかし、たんになわばりを閉じこもっているだけでは遺伝子は途絶えてしまいます。メスは、相手のなわばりにいるからです。こうして進化という巧緻なプログラマーは、「相手のなわばりを侵せ」という命令を書き加えました。私たちは生まれながらにして、自分のものを守り、相手のものを奪うよう「設計」されています。

 尖閣諸島に香港人の活動家らが不法上陸すると、日本人は無条件に怒りの感情が湧いてきます。同様に、都議や県議を含む日本人が尖閣諸島に無許可で上陸すると、中国の反日デモに火がつきます。これは無意識の衝動なので、歴史的経緯をどれほど説明しても双方が納得することはあり得ません。

 そもそもヒトは、相手(中国人や日本人)が間違った行動をとったから怒りを感じるわけではありません。因果関係はこの逆で、まず衝動的な怒りがあり、その感情を正当化するために、「悪いのは奴らだ」という理屈が〝理性によって″構築されるのです。このことから、なわばり問題では対話はなんの役にも立たず、火に油を注ぐだけなのがわかります。

 生物の進化とともに育ったなわばり感情はものすごく強力なので、手っ取り早く大衆の支持を獲得したいときにしばしば利用されます。


橘玲の書籍&メルマガのご紹介
世の中(世界)はどんな仕組みで動いているのだろう。そのなかで私たちは、どのように自分や家族の人生を設計(デザイン)していけばいいのだろうか。
経済、社会から国際問題、自己啓発まで、様々な視点から「いまをいかに生きるか」を考えていきます。質問も随時受け付けます。
「世の中の仕組みと人生のデザイン」 詳しくは
こちら!
橘 玲の『世の中の仕組みと人生のデザイン』 『橘玲の中国私論』好評発売中!

バックナンバー

»関連記事一覧を見る

海外投資必勝マニュアル&本

海外投資のノウハウが凝縮! ここで紹介しているコンテンツ、書籍はすべて、ネットから購入が可能です。さらに「海外投資実践マニュアル」は「海外投資を楽しむ会」の会員になれば割引価格で購入可能です。

作家・橘玲がメルマガ配信を開始!
橘 玲(Tachibana Akira) 作家。1959年生まれ。早稲田大学卒業。「海外投資を楽しむ会」創設メンバーのひとり。著書に『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』『(日本人)』(幻冬舎)、『臆病者のための株入門』『亜玖夢博士の経済入門』(文藝春秋)、『黄金の扉を開ける賢者の海外投資術』(ダイヤモンド社)など。
橘玲×ZAiONLINE海外投資の歩き方
作家・橘玲がメルマガ配信を開始!
subcolumn下影

ページのトップに戻る

本WEBサイトに掲載している全ての記事およびデータについて、その情報源の正確性・確実性・適時性を保証したものではありません。本サイトの提供情報を利用することで被った被害について、当社および情報提供元は一切の責任を負いませ ん。万一、本サイトの提供情報の内容に誤りがあった場合でも、当社および情報提供元は一切責任を負いません。本サイトからアクセス可能な、第三者が運営するサイトのアドレスおよび掲載内容の正確性についても保証するものではなく、このような第三者サイトの利用による損害について、当社は一切責任を負いません。また、併せて下段の「プライバシーポリシー・著作権」もご確認ください。