ハードウェアに頼った組み合わせは、「組み合わせという単品」を生むだけである。性能限界の壁に突き当たっても、新しい価値を生み出そうとする技術者のモチベーションこそが、組み合わせによる付加価値を生む源泉であり、それを支えるのは経営者のビジョンである。今、日本が時代を先取りし、そうした新しい価値を提供できるのは自動車業界だ。日本の自動車業界は「ハイブリッド」「ICT」「エネルギー」の三つの軸により構成される夢のような空間の先頭を走っている。

「組み合わせ
という単品」の罠

 性能限界に突き当たったら、色々な技術を組み合わせて新しい価値を創り上げよう、という考え方は間違っていない。問題は、「技術を組み合わせればいいというものではない」ということだ。

 日本政府が推進していている「パッケージ型インフラ輸出」という戦略がある。単品ではなく、複数の技術をパッケージにして、付加価値の高いインフラ市場を開拓していこうという政策である。まさに、組み合わせ発想であり、政策の方向性は時宣を得ている。しかし、中には単純に複数の技術を組み合わせているだけで、企業としての取り組みは単品技術売りと何も変わらないと思われるケースもある。

 前回、三つの組み合わせの事例 を示した。すなわち、ガスタービンと蒸気タービンを組み合わせたコンバインドサイクル、BMWの組み合わせ型のラインアップ、そしてiPhone、iPad、iTunesなどからなるアップルワールドだ。組み合わせの付加価値はコンバインドサイクル、BMW、アップルの順に高くなる。

 コンバインドサイクルの発電効率は際立って高いが、仮に従来型の火力発電の技術を改善することで同じだけの発電効率を実現できたら、商品としての価値は同等である。つまり、発電技術である限り、コンバインドサイクルは発電効率を改善するための手法に過ぎない。