わずか2、3分後、わたしの名前を呼ぶだれかの声が聞こえた。……その後、となりの席に私あての封筒が見え、あけてみるとカードにこう書かれていた。「偽りに満ちた人生をおくるのはやめるんだ、ダール。自分自身に誠実になれば、運命がおとずれるだろう。舞台裏で会おう。……」

 舞台裏の廊下を何かにひっぱられるように進んでいったわたしは、奥の部屋でネパールの僧侶のような真紅のローブをまとい、静かなのに強烈なパワーを発している人物に出会う。……やがて、彼の口にやさしい笑みが浮かび、眼が子どものように輝きはじめた。そして、自信に満ちた口調で話しはじめた。

「自分の運命を見つけられるのは自分だけなんだ、ダール。自分だけが自分のために用意された道、心が歩けと呼びかけている道を知っている。でも、案内があれば、旅はもっと楽になる――最高の人生にたどりつくのを助けてくれるすばらしいコーチを、だれもが必要としている。弟子の準備がととのったときに師はあらわれる、と禅僧たちはいっている。使いふるされた表現だが、真実でもある。きみが自分の直観を信じ、今夜ここにきてくれてうれしいよ。怖がることはない。きみの身に起きたことはわかっている。きみの喪失はわかっている。苦しみはわかっている。混乱はわかっている。切望についてもわかっている」

「切望?どういう意味ですか?」わたしは静かな声できいた。