個人のパソコン作業を効率化することで話題の『脱マウス最速仕事術』。この本では、ショートカットキーをマスターすることで「マウス依存度」を下げることを提唱していますが、実際のところ脱マウスでどれだけ生産性が上がるのか?非常に気になるところだと思います。働き方改革、生産性向上が叫ばれるなか「脱マウス」はどれほどの威力があるのか?今回は『脱マウス最速仕事術』の著者であり、ショートカット研究家でもある森新さんに「脱マウスの本当に効果」について聞いてました。(取材・構成/イイダテツヤ、撮影/疋田千里)

エクセルで発覚!<br />仕事が「できる人」と「できない人」を隔てる決定的な差とは?


――この本では「脱マウス」「マウス依存から脱する」という話をしているのですが、実際のところマウスを使わないことで、どのくらい効率アップにつながるのでしょうか?

 そこは必ず聞かれるところなんですが、私が徹底的に検証した結果、年間約120時間の短縮になります。細かい話になりますけど、ショートカットキーを1つマスターすると、手をマウスに移動して、クリックする手間が省けます。これってだいたい0.5秒かかるんです。この積み重ねで、ショートカットキーを一つ覚えると、一日にざっと30秒ほどの差が出てくるんです。

 「一日にたった30秒?」と思う人も多いでしょうが、ショートカットキーは約60個あるので、これをマスターすると、一日あたり約30分の時間節約になります。この30分を「たかが30分」と考えるか「貴重な30分」と考えるかはその人次第です。でも、たかが30分と言っても、月20日働くとしたら月間10時間、年間120時間の違いが出てきます。年間120時間という「人生の砂時計」をどれだけ大事に考えられるか。少なくとも、私は大きな差になると思っています。

エクセルで発覚!<br />仕事が「できる人」と「できない人」を隔てる決定的な差とは?森新(もり・あらた)
ショートカット・Outlook研究家
1988年高知県生まれ。北海道大学工学部を卒業後、サントリーフーズ株式会社に入社。サントリーグループ内にて、営業や管理系部門を経て現在新規事業に携わる。自らの働き方改革に取り組むなかで、PCスキル獲得による業務生産性の大幅向上の余地を発見。ライフワークとして研究を重ね、独自にノウハウを蓄積。研究したノウハウをスキルシェアサイト「ストアカ」を通じて発信したところ、個人だけでなく法人からも講演オファーを受ける大人気講師に。最高ランクとなるプラチナバッジを獲得。本書の内容のベースとなるショートカットキーのセミナーの満足度は、97%と極めて高い評価を受けている。また、メディアからの注目度も高く、FNN系列「Live News α」や日本テレビ系列「マツコ会議」に出演するなど、数々のメディアに取り上げられている。著書に、『アウトルック最速仕事術』、『脱マウス最速仕事術』(ダイヤモンド社)がある。

――「年間120時間」と言われると、たしかに無視できない感じがしますね。

 この数値は「最低でもこのくらいの差が出る」というもので、私が実験したケースではもっと大きな差が出ることもあります。たとえば、私のセミナーでは「Excelで『掛け算九九の表』を作ってください」と参加者にお題を出したことがあるんです。「2×2=4」「9×9=81」という一覧表を作るだけの作業です。

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 作業自体は単純ですが、すごく大きな差が出るんです。マウスをほとんど使わず、サッと作ってしまう人だと30秒かからないんですが、一番遅い人で12分かかっていました。もちろん、Excelスキルの差がありますから、単純に「マウス依存」だけを理由にすることはできませんが、キーボードをどのくらい使い倒せるかによって、24倍もの差が生まれたのは事実です。

――24倍とは大きいですね!

 実際、仕事で「掛け算九九の表」を作ることはないでしょうけれど、それくらいパソコンの事務処理能力には個人差があるということです。そんなにも差があるのに、意外とその差は考慮されていません。パソコンスキルが高い人も、低い人も同じ給料が支払われているのですから、こんな不公平な話はありません。

 ワンクリック0.5秒、一日30分の違い。この差をどう捉えるかは本当に個人の感覚次第ですが、そもそも日本は製造業が非常に多くて、製造業の現場では1分、1秒を削り出すために必死で改善し、日々努力しています。それなのにパソコンに向き合っているホワイトカラーが一日30分もの時間を安易に無駄にしているとしたら、それって意識が低すぎると思いますね。

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