虫歯治療につきものなのが「キーン」という不快な器具の音や「がりがり」と歯を削る振動や激しい痛み。しかし近年、「削らない、痛くない」を重視する、新しい治療法が登場してきた。重度の虫歯でも、できる限り歯を抜かず、歯根を残す。そんな、虫歯治療の最新トレンドを紹介しよう。

●ヒールオゾン

痛みが少なく、歯を残す虫歯治療ヒールオゾン 写真提供:中垣歯科医院

 ヒールオゾンは、塩素よりはるかに強いといわれるオゾン(O)の殺菌力を利用した虫歯の治療装置。ドイツの歯科器材メーカーKaVo(カボ)社製で、虫歯の治療や予防のほか、歯根内部の根管治療にも用いられる。

 短時間の照射で、99%の細菌を殺菌できる能力を持つとされるが、オゾンが効果的に殺菌力を発揮できる深さに限りがあるため、虫歯治療では、主に初期虫歯に適用されている。

 進行した虫歯の場合、従来の切削器具を用いて、必要最小限の範囲を削ったのち、ヒールオゾンの照射で殺菌消毒してから、詰め物などを充填する。また、オゾンの強力な酸化作用による化学反応が歯質の強化につながるので、虫歯再発の予防にもなる。磨きにくい矯正中の虫歯予防など、応用範囲の広がりが期待できる。

●薬剤による虫歯治療
①スウェーデンで開発されたカリソルブ

 カリソルブは、歯を削らずに薬で虫歯だけを溶かす方法だ。次亜塩素酸ナトリウムとアミノ酸を混ぜたジェルタイプの溶液を塗布すると、虫歯になった部分だけを溶かすことができる。溶かした虫歯箇所は専用の手動器具を使って除去する。

 比較的軽度の虫歯に適用される治療法で、2007年に日本でも厚生労働省の認可を受けており、治療に取り入れる医院も増えつつあるという。

②日本生まれの3Mix-MP法

 3Mix-MP法は、歯髄に近い位置まで進んだ虫歯にも用いられる治療法だ。歯を最小限に削ったあと、基剤を加えた3種類の抗菌剤で無菌化することで、虫歯を治療する。

 3種の抗菌剤を使うことで好気性菌(酸素の存在が不可欠な菌)から通性嫌気性菌(酸素がなくても発育できる菌)、偏性嫌気性菌(酸素を嫌う性質のある菌)など、象牙質の深いところにある虫歯に多く存在する菌にまで、その効果を発揮する。基剤はこれらの薬剤を患部に効率よく行き届かせるために用いるもの。

 抗菌剤を使うため、事前にアレルギー検査を行うなど、慎重な対応が求められる一面もある。