ビクター・ヴルーム ビクター・ヴルーム(1932年生まれ)は、組織における人間行動の心理学的分析の第一人者として知られている。彼の主要な功績として、自身の期待理論を適用したモチベーションの研究や、リーダーシップスタイルと意思決定に関する研究などがある。後者の研究では、フィリップ・イェットンとともに、さまざまな状況に対してそれぞれに最適な問題解決手法を選択するためのモデルを開発した。

人生と業績

 ビクター・ヴルームは1932年カナダ生まれで、学士号と修士号をマギル大学から、博士号をミシガン大学から取得した。彼は、ミシガン大学、ペンシルバニア大学、カーネギー工科大学で教鞭を執った後、エール大学経営大学院で組織マネジメントのジョン・G・サール記念教授および心理学教授に就任した。また、多くの大企業のコンサルタントも務めた。

 ヴルームの研究は、経営学と心理学という2つの学問分野にまたがっている。彼が最初に心理学を組織に当てはめて考えたのは、1960年に書いて賞を受けた博士論文だった。これは、意思決定への参画に当たっての個人の性格の影響を検証したものだった。彼の理論は1964年の著書『仕事とモチベーション』(Work and Motivation)でさらに展開された。この本では期待理論が初めて仕事に適用された。期待理論は、人がある種の行動によって自分が期待し価値を認める代償が得られると思えば、その行動に対するモチベーションが生まれるという理論である。

 仕事における行動を決定づける要因についてのヴルームの研究は、その後、フィリップ・イェットンとの「リーダーの意思決定に関するヴルーム・イェットン・モデル」の開発へと進む(『リーダーシップと意思決定』Leadership and Decision-Making)(1973年)。これは、さまざまな状況ごとに最適なリーダーシップスタイルを特定するコンティンジェンシーモデルである。特に、マネジャーが部下にどの程度まで意思決定プロセスに参画させるべきなのかを判断するのに役立つ。

 ヴルームはこのモデルを、『新しいリーダーシップ』(The New Leadership: Managing Participation in Organizations)でアーサー・ヤゴとともにさらに発展させた。