橘玲の世界投資見聞録 2012年9月20日

[橘玲の世界投資見聞録]
“国家破産”の街ギリシア・アテネを旅して

前回「エーゲ海の豊かな島・クレタ島でギリシアという「国」について考える」、クレタについて書いたが、じつはデモとストライキの“嵐”が吹き荒れる2010年12月にアテネを訪れている。その体験はBLOGにアップしたが、せっかくの機会なので「世界投資見聞録」にも掲載しておきたい。

 なお、本文はほとんど加筆・訂正していない。1年9カ月経っていろいろなことがあったが、本質的な部分(ギリシア問題が原理的に解決不能だということ)はなにも変わっていないからだ。

労働者の4人に1人が公務員

 アテネは野良犬が多い。それも大きくて、やたらなれなれしい。カフェでコーヒーを飲んでいると、いきなりテーブルの下に潜り込んできたり、膝に頭を乗せてきたりする。最初は店で飼っているのかと思ったが、ただたんに、そこらへんにいる犬にエサをやっていたらなついたということらしい。捕獲処分のような野蛮なことをしないのが、生き物を愛するギリシア人の誇りなのだという。

アテネのカフェ。テーブルの間をデカい犬が走り回っている (Photo:©Alt Invest Com)

 アガメムノンのマスクで知られる国立考古学博物館の隣に、国立工科大学がある。この周辺はアル中とヤク中の溜まり場で、うつろな目をした男たちが昼間から夢遊病者のように徘徊している。道端に座り込み、エビのように身体をまるめ、注射器を手に化石のように動かなくなった男の脇を、学生たちが談笑しながら通りすぎていく。今年の冬はヨーロッパを大寒波が襲ったが、それでもアテネはコートなしで過ごせるほどで、路上生活者が街の中心部に集まってくるのだ。

 国立工科大学からオモニ広場を経てパネピスティミウ通りに向かう。ここは銀座中央通りや表参道のようなところで、ドーリア式の神殿を模した国立図書館、国立アテネ大学、国立学士院(アカデミア)の向かいに、デパートや高級ショッピングセンター、ブティック、アクセサリーショップなどが並んでいる。

 ギリシアのあちこちに「国立」を冠した施設が目立つのは、この国の人口の約10パーセント(雇用者の24パーセント)、およそ110万人が公務員で、彼らの職場が必要だからだ。公務員の数が「約」とか「およそ」でしか表現できないのは、この国にはそもそも信頼できる統計がなく、政府ですら公務員の正確な数を把握していないからだ。

 豪華な毛皮を羽織り、買い物袋を抱えて高級ブティックから出てきた妙齢の女性が路上に出てタクシーを止め、大声で運転手を怒鳴りつけている。

 このところずっと、公共交通機関のストライキがつづいている。この国では交通機関はほぼすべて公営だから、彼らがストをすると、バスも鉄道も地下鉄も一斉に止まってしまう。そうなるとタクシーはまったくつかまらないから、誰もが強引に車を止めて、同じ方向なら無理矢理乗り込もうとするのだ。

 こうして路上には人と車が入り乱れ、渋滞はますます激しくなり、車はぜんぜん動かないが、彼らはまったく気にしない。

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橘 玲(Tachibana Akira) 作家。1959年生まれ。早稲田大学卒業。「海外投資を楽しむ会」創設メンバーのひとり。著書に『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』『(日本人)』(幻冬舎)、『臆病者のための株入門』『亜玖夢博士の経済入門』(文藝春秋)、『黄金の扉を開ける賢者の海外投資術』(ダイヤモンド社)など。
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