未来への決断
ダイヤモンド社刊 2427円(税別)

 「マネジメント、特にこれまで順調だった大企業のマネジメントにとっては、これからは何を行うかが問題になる」(『未来への決断』)

 順風満帆だった大企業が、突然危機に直面し、低迷し、挫折する。だが原因は方法が下手だったからではない。つまりマネジメントに失敗したためではない。大抵は正しく行なっている。実を結ばないことを行なうようになったにすぎない。

 なぜなら、事業の定義としてきたものが、現実にそぐわなくなったためである。

 第一に環境としての市場がある。顧客や競争相手の価値観と行動である。第二に自らの目的、使命がある。第三に自らの強みと弱みがある。

 この3つが、ドラッカーが「事業の定義」と呼ぶものを構成する。 事業の定義のなかには、長く生き続ける強力なものがある。だが、人のつくるものに永遠のものはない。

 事業の定義が陳腐化してきたときの最初の反応は、保身である。現実を直視せず何事も起こっていないかのように振る舞う。次によく見られる対応が、小手先の対策である。こうして気がついたときには惨事となっている。今日の日本の苦悩の最大要因である。

 「事業の定義が陳腐化しつつあることが分かったならば、新たな定義を行い、事業の方針と方法を変えなければならない。自らの行動を、市場の現実と、自らの使命として規定すべきものと、獲得すべき強みに沿ったものにしなければならない」(『未来への決断』)