日本航空(JAL)再上場も<br />初値が暗示する三つのリスク2年7ヵ月ぶりの再上場を果たし喜びの表情を見せる日本航空の経営陣。 右から稲盛和夫名誉会長、植木義晴社長、大西賢会長

 日本航空(JAL)が9月19日、再上場を果たした。

 経営破たんして2010年2月に上場廃止になって以来、2年7ヵ月ぶりという異例のスピード再上場だ。

 初値は3810円と売り出し価格を20円上回り、時価総額は約6900億円を記録した。今年世界で株式公開した企業のなかでは、フェイスブックに次いで2番目の規模になる。国(企業再生支援機構)は、3500億円の出資を2倍近くで回収した。

 だが、株式市場の関係者からは、「売り出し価格こそ上回ったものの、想定していたほどに株価は跳ね上がらなかった」という声が出ている。

 JAL再上場時の株価への期待が高かったのは、売り出し価格が企業価値に対して、割安だったためだ。

 JALは会社更生法適用によるリストラ効果で、2011年度は売上高1兆2048億円に対して、営業利益で2049億円、当期純利益で1866億円を出した。ここから弾き出される株価収益率(PER)は約3.7倍。JALは倒産に伴い多額の繰越欠損金を計上したため、前期は約350億円の法人税が免除されているが、それを考慮しても約4.5倍である。9月19日時点の全日本空輸(ANA)のPERが約16倍であるから、かなりの割安といえる。このため、「バリュー(企業価値)に対して株価が低すぎる」(運輸アナリスト)と言われていた。

 JALの株価が跳ね上がらなかった理由は三つある。

 まずは、中期経営計画などで公表している数字だ。

 2011年度に営業利益で2000億円を上回っているにも関わらず、2012年度の計画は1500億円と減益の見通し。この2年間は徹底してコスト削減に努めてきたが、今後は、成長に伴いコスト増が見込まれる。来年1月には、国際線の座席を全面的にリニューアルするなど投資も再開した。

 公的支援や会社更生法という劇薬を使っての業績回復に、「ANAと比べて、JALの実力がどの程度なのか見極めにくい」(姫野良太・バークレイズ証券アナリスト)とみられている。