グローカリゼーション vs リバース・イノベーション

 これまで、多くの企業はグローカリゼーション戦略、即ち「富裕国の顧客向けに開発されたグローバル製品にわずかな修正を加え、主に機能を落とした低価格モデルを輸出する」戦略をとってきました。

 しかし、所得水準も、顧客ニーズも、社会インフラもまったく異なる新興国市場では、もともと富裕国の顧客用につくった製品が幅広く受け入れられるはずがありません。新興国では、ローカルのニーズに応えるために白紙の状態からイノベーションを始める必要がある、とゴビンダラジャンたちは指摘しています。

 先進国の企業はリバース・イノベーションを無視する、あるいは従来のグローカリゼーションのみで生きていくことはできないのでしょうか?

 ゴビンダラジャンたちは「海外での機会を逃すこと以上に高くつくおそれがある。いわゆる『新興国の巨人』と呼ばれる、途上国を本拠とする新世代の多国籍企業にとってチャンスとなり、富裕国の多国籍企業は安定した国内市場で、痛みや手厳しい打撃を食らうことになるかもしれない」と述べています。GEの会長のジェフリー・イメルトも同様の懸念を表明しています。リバース・イノベーションは選択の問題でなく、必然であるという主張です。

 皆さんの周りをちょっと見回してみてください。たとえば日本国内でも、数年前はあまり見かけなかったハイアール・ブランドの家電商品が、あちこちで目に付くようになりました。コスト・パフォーマンスの良いものに国境はありません。リバース・イノベーションはグローバルに活躍しようとする日本企業だけでなく、引き続き国内市場に注力しようとする内需型企業にとっても、大きな影響を及ぼす可能性があります。