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日本製品はこれからも中国で売れる - 広木隆「ストラテジーレポート」

 「光と波PART3」で紹介した筆者の愛読書、「偶然とは何か 北欧神話で読む現代数学理論全6章」(イーヴァル・エクランド著)には、確率論的リスクと無知のリスクを区別することが述べられている。確率論的リスクとは、読んで字のごとく、ふつうの確率計算から求められるリスクであり、無知のリスクとはこれから起こることについての情報の欠如からくるリスクである。実験によれば、人は無知のリスクより確率論的リスクのほうを抵抗なく受け入れるという。「知らない悪魔より知っている悪魔のほうがまし」というわけだ。

中国各地で吹き荒れた反日デモというのは無知のリスクである。デモはひとまず沈静化に向かっているようだ。この背景は何であったのか、巷間、様々なことが言われている。もちろん日本の外交能力の拙さに端を発したところは大いにあるが、共産党大会を控えた胡・指導部の事情(威信誇示と不満民衆のガス抜き)もあるだろう。重慶のトップを解任された薄煕来支持の保守派が巻き返しを図って反日感情を最大限に利用しているという説も、まことしやかに喧伝されている。習近平国家副主席の動静が2週間にわたって途絶えていたことや党大会のスケジュール発表が遅れていることも憶測を呼んでいる。共産党内部の権力争いが熾烈になり、反日デモの抑制が効かなくなっている、いや意図的に国民の目を逸らす目的で当初はデモを放置した、云々と諸説語られるものの真相は藪の中だ。

この騒動を通じて明らかになった点がある。それは、中国社会の歪みが臨界点を越えつつあり、ちょっとしたきっかけがあれば民衆を暴徒化させ略奪行為にまで走らせるというレベルにまで達しているということだ。高成長の陰で、弱者や貧困層の置かれている苦境は以前から指摘されていたが、今回こういう形で問題が顕在化したことで彼らの不満の大きさや鬱屈したエネルギーの凄まじさを感じたのは当局だけではないだろう。日本企業にとってもあらためて中国ビジネスのリスクを再認識する契機となったはずだ。中国戦略の練り直しが必要になるだろう、という論調が散見される。

我々の関心は、今後の中国関連企業の業績にどのような影響があるかという点である。デモは収束の方向で、閉鎖に追い込まれていた店舗や工場も再開に動いていると伝わる。しかし、いくら店を開けたところで、いくら工場でモノを作ったところで、反日感情がこれほどまでに高まってしまった中国で日本製品は売れるのだろうか?デモは取り締まれても不買運動は取り締まれない。アナリストのコメントは悲観的なものが多い。「反日運動が生産に直接与える影響は限られるとしても、期待が高まりすぎた中国事業への見方を修正するきっかけになったのではないか」「中国事業は引き続き有望だが、供給体制の整備と需要の鈍化が重なればこれまでのような高い収益性を維持するとは考えにくい」などネガティブなコメントで溢れている。が、それはある意味、当然の – というより穏当なコメントであろう。このような事態を目の当たりにして「影響はありません」とは誰が言えたものか。筆者も「影響がない」とまでは言わないが、筆者は業績に与える深刻な影響はないものと考える。

「ほら、始まったよ、広木の能天気ぶりが!」という声が聞こえてきそうだが、なぜ筆者は日本企業の業績に深刻な影響はないと考えるのかその理由を以下に述べる。

前段で、この騒動を通じて明らかになった点があるとして、中国社会の歪みを挙げたが、もうひとつ明らかになった点がある。それは – 相反することだが – 中国社会の成熟である。過激な行為や言論に対しては、同じ中国人からそれをたしなめる声があがったという。複数のソースが伝えているから本当なのだろう。

<デモが暴徒化するにつれ、数日前からネット上では、中国でも日本でも、そうした行動をいさめる動きが自然発生的に湧き上がりましたね。理性的に行動しようとか、暴力反対とか、同じ中国人として情けないだとか。>
(9月20日 「えっ、「日本は中国と戦争したがっている」って?中国人は日本の“異常さ”がまだ分かっていない」中島恵/日経ビジネスONLINE)

<筆者は8〜9月、中国政府の対日当局者、中国人教授、弁護士など多くの知識人と尖閣問題について意見交換したが、大部分は「中国人は以前に比べて日本に対して理性的になっている」と解説した。実際のところ8月26日に反日デモが起こった広東省東莞市では日本料理店を襲おうとしたデモ隊に対し、別の参加者から「理性的行動」を求める声が上がったほどだ。>(9月13日「尖閣対立」本格化から1カ月 日中関係はどう変わったのか「冷静」から「緊張」局面へ  城山英巳・時事通信北京特派員)

<シンセンの松下工場の、自社機械を壊す中国人社員に対して、中国ネットの非難が集まった。「社員だろう?」、「嫌なら辞めればいいのでは」、「裏切り者」など。>
(9月18日 宋文州氏のツイート)

<こうしたなか「愛国心は理性的、合法的に示せ」と理性的な行動を促す声が強まってきた。>
(9月20日 「反日デモ 中国共産党の思惑は」コラムニスト加藤嘉一/日経新聞)

筆者は中国語が読めないが、マネックス証券の同僚として働く中国人のX君(伏字でXと使っているわけではなく、彼の名前を英語表記すると頭文字がXなのだ)にお願いして実際の微博(ウエイボー・ミニブログの意味。中国版のツイッター)を閲覧して、代表的なツイートを探してもらった。例えば、このようなものが実際にある。発言者は何炅というバラエティ番組の司会者で、中国ではとても人気があるそうだ。



<「愛国」という言葉は非常に高尚です。日本車を破壊したり、日本料理店で食い逃げしたり、外国人を理由なしで殴ったりする人が「愛国」という言葉を侮蔑しないでください。「尖閣」は我々の島ですが、民族の尊厳も我々の手の中にあります。>

前掲の城山英巳・時事通信北京特派員の記事にはこういう見方が紹介されている。
<長く対日交流に携わっている中国当局者も「日本に対して過激な発言が出ても、それにたしなめる理性的な発言が出る。これがこれまでと違う所だ」と漏らした。>

「これがこれまでと違うところだ」という言葉は注目に値する。筆者もそう感じる。だから、日本製の製品はこれからも中国で売れると思うのだ。城山氏の記事からの引用を続けよう。

<「釣魚島は中国のもの、蒼井そら(中国で大人気の日本のアダルト女優)は世界のものだ」。こういう赤い横断幕が各地の反日デモで登場して話題となったが、尖閣問題では譲らないが、日本のすべてが嫌いではない、「これはこれ。あれはあれ」という中国の若者の割り切った対日感情が見て取れる。「日本製ボイコットを叫ぶけれど、使っているカメラはキヤノン」というような感覚だろう。>

暴徒化し略奪行為に走るのは、ごく一部の層である。大部分を占める中間層の多くは冷静に生活している。中国は豊かになったのだ。もちろん豊かになっていないひとも大勢いて、それが今回の騒動の根底にある問題なのだが、個々人というより「中国マーケットの購買力」という点では確実に大きくなっている。そして、その原動力は豊かな生活を送りたいという願いである。日産の自動車に乗り、ユニ・チャームの高品質の生理用品を使い、キヤノンのカメラで写真を撮って、日本のアダルトビデオを観る生活を知ったら、もう後戻りはできない。尖閣問題は譲らないが、「これはこれ。あれはあれ」だ。

そもそも中国、あるいは中国人を語る際に「ダブルスタンダード」は常套句である。何でも自分に都合よく考える。「自分の権利は守る、人の権利は知ったこっちゃない」という発想が根底にあるからブランド品や著作物の海賊版が横行し、一つの契約なのに条項が違う契約書が複数存在したりするケースがザラにある。自分の快適な生活のためなら「日本は嫌い、だけど日本の製品は使う」という割り切りなど簡単にしてしまうのではないか。それが日本企業の製品の売り上げはそれほど落ち込まないと考える理由である。コマツや日立建機の苦境はまだ続くかもしれない。しかし、中国の「消費関連」銘柄はそれほど悲観的に捉える必要はないというのが筆者の考えである。ちなみにユニ・チャームの製品を使う人は、アダルトビデオは観ないと思われるので、その点は修正しておく。



筆者の娘はこの秋、小学校を受験する。いわゆる「お受験」というやつだが、これがなかなか大変だ。今年の夏は大好きなプールも諦めて夏期講習に通う日々だった。小学校受験は塾任せにできない。合否の鍵を握るのは家庭学習だ。よって筆者もかなりの時間を割いて娘の勉強をみたので、今では小学校受験の傾向と対策については、ちょっとしたエキスパートだと自負している。
頻出問題のひとつに「四方からの観察」というものがある。例えばこの図のように、テーブルの真ん中に積み木が置かれていて、その周りをぴょんこちゃん(うさぎ)、にゃんこちゃん(ねこ)、くま君、おさる君の4人(4匹?)が囲んでいる。「それぞれから積み木はどう見えますか?その絵を描きましょう」という問題である。場所が違うと、見え方も違うということが理解できなければならない。その場所に行かずに考えることができるかという、すなわち「想像力」の問題なのである。



尖閣諸島は日本の領土だ。日本固有の領土であることは歴史的にも国際法上も明らかである。明々白々のその事実をあらためて国際社会にアピールするのに、果たして国が買い取るという行為は必要だったのか。しかも、このタイミングで。見る場所が違えば見え方が違う - 小学校受験の問題なら、そこまで理解すれば十分だが、大人の世界では落第である。見る場所が違えば見え方が違うのは当たり前。違う場所にいて、違う見え方、捉え方をする相手に、自分がどう見られているかを考えなくては大人の試験問題は不合格だ。

国益に絡む重大な問題に、その権限もない一地方自治体の首長がパフォーマンスを行う愚。さらに国政が、それに煽られて、事態の修復を図るどころか火に油を注ぐ体たらく。外交センスというというより、「想像力」の欠如だ。政治家に問いたい。「ぴょんこちゃんから積み木はどう見えますか?」その場に行かずに、考えなさい。




(チーフ・ストラテジスト 広木 隆)

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