ファンドマネジャーに向く人は、経営者に不向きではないかという仮説が以前から気になっている。

 経営者にはいろいろな経歴の人がいる。しかし、成功した経営者で、前歴にファンドマネジャー経験がある人がもっといていいと思うのだが、案外思い当たらない。

 ファンドマネジャーとして優秀な人が、サラリーマンとしてあまり優秀でないことが多い点(要は出世しないタイプであるということ)は、どうやら確からしい。

 有能なファンドマネジャーには多数説の弱点や見落としを探すことに喜びを見出す人、「長い物に巻かれる」的な行動が嫌いな人が多い。会社組織では上司には嫌われるタイプだ。

 ベンチマーク(多くは市場平均を表す指数)にいつも勝てるという意味で有能なファンドマネジャーが本当にいるのかと訝る向きがあろうが、特定の期間によく相場が見えて、ベンチマークに、したがってライバルたちに勝っている運用者で、同業者から一目置かれるような人は暫定的に「ファンドマネジャー向き」と呼んでもいいだろう。彼らが今後も勝ち続けるとは限らないが、確かにサラリーマン向きでない人が多い。

 冒頭の仮説の正誤を判断するには、「経営者向き」の人格をどうとらえるかが問題になる。独断だが、有能な経営者は、(1)自己主張の強さ、(2)ケチといえるくらいの金銭的なこだわり、(3)粘り強さ、(4)他人を惹きつける魅力、を身につけていると思う。

 もう少し集約すると、成功した経営者には「自分に都合のいいことを信じる力」の強い人が多い。信じるから、物事が徹底できるし、凡人から見ると信念のある人は魅力的に映るから他人を動かすうえでも有利だ。同様の性質を持っていて失敗する人もいるから、これだけではダメなのだろうが、一つの特徴といえるのではないか。