「夢」を叶える覚悟

第5回:グーグルに勝利した男(3)<br />「あの時、この言葉に出会っていなければ」<br />僕の人生をつくった言葉自宅の壁に掛けられた「吹毛常磨(すいもうつねにます)」の書。

 大きな夢を実現しようと仕事に向き合えば、いろんな困難に直面する。だから、ブレない覚悟が大事だ。覚悟とは、これから立ち向かう困難に対する「心構え」といっていい。僕も今の仕事では、幾多の困難を乗り越えてきた。「さすがに今度ばかりは厳しいかも……」と思い悩んだことが幾度もあった。

 ビジネスの世界では、次の一手が止まった瞬間に負けが決まる訳だから、二の矢、三の矢を射続けることができるかどうかが勝敗を決する。僕の場合、挫けず頑張り続けるうちに、奇跡が起きた。いや、正確に言い直そう。何かが、奇跡を起こした。奇跡を起こした原動力は、一体何だったのだろうか。

 それは、仕事に対する覚悟であったと思っている。その覚悟を授ける言葉があるので、次の二つを皆さんにプレゼントしたい。二つとも僕が若い頃からずっと心に刻んで接してきた言葉だ。

 一つは「吹毛常磨」と書いて、「すいもうつねにます」と読ませる。鳥の羽がふわりと落ちただけで、真っ二つに切れるほどの切れ味を誇る吹毛剣と呼ばれる伝説の剣があるという。だが、この剣とて常に磨いておかないと切れ味が悪くなると言っている訳だ。ドキッ、とさせられる。この言葉が、日々つい怠けそうになる弱い心をビシッと戒める。「君ね、地金を平素から磨きなさい。それが肝要だ」と、事あるごとに師に言われたものだ。

 もう一つは「無畏」と書いて、「むい」と読ませる。この言葉が、いろんな困難に直面した時、僕に大きな勇気を与え続けてくれた。「君、決して畏(おそ)るる無かれ」と。今風に言えば、「自分が信じるものがあれば、何も恐れず、まっ直ぐに思った通りのことをおやりなさい」と。昨年、京都・清水寺の森清範老師にこの言葉を大書していただいた。今は、拙宅の狭い廊下の壁に悠然と額が掛かっている。

 余談になるが、第32代アメリカ大統領フランクリン・ルーズベルトも同様のことを言っている。「The only thing we have to fear is fear itself.(我々が恐れねばならぬ唯一のものは、恐怖心そのものである)」と。