人を動かすコツ
夫婦間でも「技術」が必要

 一方で、男性の微妙な心理を心得ていたIさんの友人Jさんは、結婚当初から旦那さんに対して、「絶対に依頼と指摘だけはしない」と決めていたそうです。仕事でプロジェクトマネジメントのリーダーを務めていた経験から、人は誰かから依頼されると嫌がる動物だと心得ていたのです。

 そのJさんは共働き夫婦でしたが、最初は洗い物やゴミ出し以外の家事を全部自分でやっていたそうです。しかし、「タマネギ刻んで、えっとブイヨンは……」とかワザとぶつぶつ独り言を言いながら、バタバタ家事をこなしていると、旦那さんが覗いてきたり、話しかけてきたりするので、そのタイミングを見逃さなかったというのです。

 しかも、「○○やって」とか「×××手伝ってくれる?」という依頼のフレーズを使わず、覗き込んだ旦那さんに「鶏肉って、こうやって皮をはいで使うんだけど、やってみる?」とか、興味を持つことを徹底的に伸ばすように心掛けたといいます。しかも、「あれ、すっごい上手だね!」と大げさに褒め続けたそうです。

 また、「洗濯物は干す前にパチパチ叩くとしわが伸びるのよね、これやってみる?」と言って、洗濯、掃除、料理にいたるまで範囲を広げ、結婚一〇年を過ぎるころには、旦那さんは家事のほとんどをマスターしてしまったというのです。

 Jさんは、子どもや部下と一緒で「旦那は育てるもの」と言い切っています。男性側からすれば、少なからず自分の単純さに気づいていると思いますので、このJさんのやり方には感嘆するのではないでしょうか。

 男性、女性に関係なく、嫌なことを依頼すれば、そこに対立軸が生まれてしまいますが、相手の好奇心や手伝わなければという自発的な意識を肯定した言い方を考えるだけで、事態は良い方向に進みます。

 誰しも、自分の状況を理解されずに命令されたり、今の状況を否定されればカチンときてしまいますが、相手を尊重する「肯定力」で向き合えば、お互いが希望している方向に結果を持っていけるのです。

 人を動かすというのはビジネスでも大変ことですが、工夫次第で相手に気持ちよく自発的に動いてもらうという状況はつくり出せます。面倒に思えるかもしれませんが、他者とコミュニケーションを取るということは、相手を認め、尊重するということですので、一方的な言い方にならないように気をつけましょう。(第2回へ続く)

※結婚の後悔(4)~(6)は、明日掲載の第2回でご紹介いたします。


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