去る9月19日、川端総務大臣は、かねてよりヤフーがサービス提供を目論んでいた、Yahoo!メールのインタレストマッチ広告(以下Yahoo!メール広告)について、これを容認することを、記者会見で明らかにした。本連載でも以前触れたが、これは日本の情報通信業界全体の将来を左右する、大きな変化である。

 背景をご存知ない方は、「そんなに大袈裟なことなの?」「Yahoo!がメールサービスに広告を配信するというだけなのになぜ行政が解釈するの?」と思われるだろう。しかし本件は、通信業界を中心に長年守られてきた「通信の秘密」に正面からチャレンジし、変化を規制当局である総務省に促した。その意味で通信産業史的には「歴史の転換点」と言っても大袈裟でないほど、重大な出来事である。

 実際ネット業界の一部は、この決定を受けて新たな商機に向けて期待を高めている。また直接の当事者の一人である通信事業者も、新たなパラダイムとの対峙に向け、苦悩しつつも検討を進めている。一方プライバシー保護を目指す界隈からは、すでに様々な問題提起も挙げられている。そのいずれもお手伝いしている人間として、夏以降の本件に係るお問い合わせの多さからも、本件のインパクトの大きさを感じている。

 そこで今回は、Yahoo!メール広告が開いた「パンドラの箱」の中身と、それが開いたことの今後の影響について、考察してみよう。

動機は行動ターゲティングの充実

 まず、Yahoo!のインタレストマッチ広告の機能から、簡単に説明しよう。この広告の仕組み自体は以前から提供されており、Yahoo!メールによってはじめて導入されたというものではない。

 インタレストマッチ広告は、インターネットを利用しているユーザに向けて、閲覧しているページの内容や、過去の閲覧履歴や検索キーワードから推測した関心の傾向などを手がかりに、興味のありそうな商品・サービスに関する広告を表示する仕組みである。一般に行動ターゲティング等と称される手法を用いた広告表示技術だ。