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「ネットの底なしの可能性に魅せられて」(Evernote・上野美香)――元MS日本法人会長古川享が聞き出す 今を駆けるスマート・ウーマンの本音

林 正愛 [アマプロ株式会社社長]
【第3回】 2012年9月27日
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上野:すごい人たちがいっぱい集まっていて、私はこのままできることがなくてフェードアウトしていくのだろうなぁと内心思っていました。ただ、数日後にみんなのメーリングリスト上のやりとりを見ながら、私ができるのはネット上のプロモーションだと思い、「こういうアイデアがあります」とアイデアを出してみました。坂本さんのそのままの声を伝えるインタビューをする、Ustreamで坂本さんとファンが対話するのを生中継する――世界のサカモトさんがソーシャルメディアを通して、ファンやネットユーザーと直接対話することが大事だと思ったのです。

 夜中に企画案を考えて(気づいたら4~5時間かかっていたんですが)、明け方にメーリングリストに投げたら、マネジメントの方から3時間後に連絡があり、「○○日だったらできますよ」という返事が返ってきたのです。「本当ですか!」と正直思いました。それからすぐに行動し、1週間しない間にインタビューをしている自分がいました(笑)。

 こういうのはどうかとアイデアを出し、たまたまマネジメントの方からチャンスをいただいた、そんな感じです。意欲のある人たちが集まっていたので、僕は何ができる、私は何ができる、と言った者勝ちでしたね。

 古川さんが坂本プロジェクトに参加するきっかけは何だったのですか。

古川:1995年に西麻布のインターネット・カフェで坂本龍一さんと佐渡裕さんの「f」というコンサートのインターネット中継があり、それを中継するときにお手伝いしたのです。マイクロソフトにいた頃ですが、立場に関係なく手伝った。学生がパラボラアンテナを借りてきて、NTTのNスターという高速ネット回線を衛星経由で30Mbpsくらい使えることになり、それを借りた。ピアノはヤマハと相談して、西麻布のカフェにグランドピアノを持ちこみ、「透明人間坂本さんが西麻布に出現して生ピアノを演奏」みたいなことをたくらんだのがきっかけだったかな。

ネットの世界には底なしの可能性がある

古川:5年後、10年後に何をやっていると思いますか。

上野:10年後は正直見えません。2、3年後が見えたらいい、という感じでいつも考えています。自分の好きなエリアというか分野ははっきりしました。ネットは日々触っていてまったく飽きません。この業界にいて、日本から世界に何かを発信するようなクリエイターや会社のお手伝いをしたり、マーケティングができたらいいなと考えています。

 これまでだいたい3年おきに仕事を変えてきましたが、自分から動いてというよりは、まわりの状況が変わったり、お話をいただいたりして変わってきていて、自分が3年で飽きたから辞めたというわけでは決してないんですね。この経験を通して思うのは、特にネットの業界は変化が激しいので、「変化は良し」とする姿勢が必要だということです。5年、10年後はどうなっているかわかりませんし、コミュニケーションツールも全然変わっていると思います。先は見えませんが、自分の在りたい姿は見えます。

古川:最後に聞きたいけれど、ネット業界の面白さはどんなところでしょう?

上野:いい質問で、すごく難しいですね。可能性の底がない、無限大にあるところでしょうか。常に変わっていくので、枠というか、限界がないんです。まだまだ足りないので、変えていかなくてはいけないところもたくさんあります。

 私が関わっているのはネットサービスですが、インターネットはインフラだと思います。電気、ガス、水道のようなものです。今はネット業界という業界ができていますが、実は、横に広がるものです。どの家庭も企業も水や電気が必要で、インターネットもそれと同じです。テクノロジーもネットもどこにでもあるべきだと思います。医療や建設の現場、食品、小売、教育現場どこにでも必要なもの。だからまだまだ広がらなければいけないと思います。

 一方で、インターネットやテクノロジーは人の働き方を良い方向に変える可能性も大いにあると感じています。会社や場所に縛られない働き方やライフスタイルも追求できる可能性だってありますね。だから楽しいです。いろいろな変化があり、驚くようなことも日々起きます。やっときたか、こういうことできるようになったんだ、と日々喜びや発見があり、とっても面白いですね。

<上野さんの話を聞いて――林正愛>

 上野美香さんは物腰の柔らかく、とても素敵な方でした。

 「たまたま声をかけてもらった」「いつもとてもタイミングがよいのです」と謙遜しておっしゃるものの、人とのつながりを大切にしているからこそ、自分でそのタイミングや出会いを引き寄せているように感じました。

 一方で、ツイッターで仕事をされる際には、これまでのユーザー歴を添えるなど、ポイントポイントでさりげなく自分をアピールする――それもまたチャンスをつかむコツかもしれないとも思いました。

 会社での活動だけでなく、声がかかって興味があることなら、個人としても積極的に参加する、その姿勢が多くのファンを増やしているようにも思いました。

 「ネットには無限の可能性がある。まだまだだから面白い」

 その言葉はとても心強く、変化を恐れずにチャレンジする姿に、たくましさを感じたのでした。
 

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林 正愛
[アマプロ株式会社社長]

りん・じょんえ/BCS認定プロフェッショナルビジネスコーチ、ファイナンシャルプランナー、英検1級、TOEIC955点。津田塾大学学芸学部国際関係学科卒業。British Airwaysに入社し、客室乗務員として成田―ロンドン間を乗務。その後中央経済社、日本経済新聞社にて、経営、経済関連の書籍の企画および編集を行う。2006年10月にアマプロ株式会社を設立。仕事を通じて培ってきたコミュニケーション力や編集力を活かして、企業の情報発信をサポートするために奔走している。
企業の経営層とのインタビューを数多くこなし、その数は100名以上に達する。その中からリーダーの行動変革に興味を持ち、アメリカでエグセクティブコーチングの第一人者で、GEやフォードなどの社長のコーチングを行ったマーシャル・ゴールドスミス氏にコーチングを学ぶ。現在は経営層のコーチングも行う。コミュニケーションのプロフェッショナルが集まった国際団体、IABC(International Association of Business Communicators) のジャパンチャプターの理事も務める。2012年4月から慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科で学んでいる。2児の母。

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