身の危険を感じた
反日デモの夜

 9月18日がピークとなった中国各地での反日デモから1週間半が経ちました。今はデモも収束し、筆者の住む上海も通常の状態に戻っています。

 筆者は上海で起業して6年になりますが、今回の反日デモはこれまでで一番大規模で、恐怖感を覚えました。特に、数日前にお客様と一緒に会食をしていた、蘇州の日本料理店の窓ガラスが割られた映像を見たとき、「もしかしたら、明日、通勤時に暴徒に殴られるかもしれない」という、差し迫った身の危険を本気で感じました。

 中国でのビジネスに関わる日本人は、これからが大変です。今回の問題は、95年のときのように首相が変われば解決するという問題ではなく、結論を出しにくい領土問題だからです。日中ビジネスは当面、逆風を覚悟しなければならないでしょう。

 ただ、私は今回の騒動は日系企業にとってよい機会だと思っています。「中国市場」をどう位置付けるのか、もう一度真剣に考える機会だからです。

 そもそも、日系企業にとってアウェイである中国市場は、自由に好き勝手にビジネスをやることを許される環境ではありません。日本では考えられないような、理不尽なことも多いのが中国市場です。加えて、企業ではコントロールできない今回のようなリスクもあります。

 そういう全ての要素を考えた上で、それでも中国でビジネスを続けるか否か――。いまこそ、考えるときだと思います。

Keep your friends close,
But your enemies closer.

 筆者は、中国でビジネスを続けるという意志を、改めて強くしました。そして、反日デモによって一瞬で今まで築き上げたビジネスが破壊されるリスクがあるからこそ、次のようなポイントを、改めて心に留めました。6年間、中国でコンサルタントとして1000人以上の中国人ビジネスマンと日本人ビジネスマンに接して得た、筆者の考えです。それを、今回は読者の皆様と共有したいと思います。

 私の好きな映画「ゴットファーザー」に「keep your friends close, but your enemies closer」という台詞が出てきます。直訳は「友人は近くにおいておけ。だが、敵はもっと近くにおいておけ」という意味で、「敵の懐に飛び込んで敵を知れ」という意味でもあります。