1度も社会から離脱することなく、定年まで安泰の職場環境にいる人たちにとって、いまの日本の雇用状況は、想像もつかないことなのかもしれない。

 2年余り「引きこもり」していた40代前半の男性(Aさん)が一転、再就職のため、1年間に300社以上応募しながら、採用が決まらなかった体験話を前々回の記事で紹介して以来、いまだに続々と反響が寄せられている。

 そのほとんどがAさんへの賛同者や同じような体験をされた方々だったため、前回は「やり直しのきかない」日本の「再就職難民」問題として、引用をご了承いただいた方の声を紹介した。

 前回の記事掲載後は、「再就職成功」体験者や、求人側の実態、違う見方をされる方々からも幅広く声が寄せられるようになって、これは奥の深い問題であることに改めて気づかされた。こうした声は、機会をつくって、随時、紹介していきたい。

「レールから落ちたら元に戻れない」
多くの普通の人でさえ不安な雇用状況

 さて、9月23日、ついに東京でも、「第1回関東引きこもり問題フュ―チャーセンター」が、落合第一地域センターの4階和室で開かれた。当日は、秋雨にもかかわらず、ファシリテーターのほかに、引きこもり当事者や経験者、家族、専門家、一般の会社員、対話そのものや再就職問題に興味のある人たちなど、多様な立場から約40人が参加して開かれた(フュ―チャーセンターの説明については、当連載第114回を参照のこと)。

 この日の比較的自由に展開された対話の空気の中でも、日本の再就職の雇用システムの話題で持ちきりになった。 

 筆者がいたグループでは、「好きなこと」「やりたいこと」と「嫌いなこと」をそれぞれが付箋に書いて、模造紙に貼っていった。

 ファシリテーションを学んでいるという参加者が、この中で気になる書き込みを皆に聞いたところ、「嫌いなこと」欄に貼られた「認められないこと」を挙げる女性がいた。

「認められないこと」と書いた男性は、いま会社を休職中だった。

「いちばん信頼している上司がいて、ずっと慕っていたのに、急に“認められない”という感じになったんです。仕事の成果を否定されることが多くなって、会社を休むきっかけになった。いまは出勤練習している。ここに来たのも、引きこもりがちになってしまって、引きこもる人たちの気持ちもわかるようになったので…」