解説 営業循環過程とキャッシュフローの関係

 1.営業循環過程

 営業循環過程とは現金製造機の中で、現金を使って現金を製造する過程のことです。最初に、現金は材料に形を変え、さまざまなプロセスを経て価値を増やし、製品へと変化します。

 完成した製品は顧客に売却され売掛金になり、代金が銀行口座に振り込まれて再び現金となってサイクルは一巡します。

 このように、現金は材料→仕掛品(製造途中)→製品→売掛金の順に形を変えて、より大きな現金として再び会社に戻ってきます。この一連のプロセスを営業循環過程といい、現金製造機の内側に相当します。これは会計(より本質的にはビジネス)を理解するために大変重要な概念です。

第3章 大トロはなぜ儲からないか?(後編)

 2.利益とキャッシュフロー

 営業循環を繰り返して増加した現金を「営業キャッシュフロー」と言います。

 本文のコハダのように、効率的な事業運営には少ない資金を高速で回転させて営業キャッシュフローを大きく増やすことが大切です。

 利益は売上(売掛金)と費用(製品原価)との差額です。通常、利益は製品を得意先に引き渡したときに計上します。しかし売掛金の回収はその後ですから、利益の計上と現金が増加するタイミングは異なります。

 次に、利益と営業CFが大きく異なるケースを考えてみましょう。利益が出たため、売上代金をすべて使って、もう一度同じ製品を製造したところ、今度は全く売れないまま決算を迎えたとします。手許に現金はありません。しかし、決算上は黒字です。同様に、製品がすべて売れても売掛金が回収されない場合も、結果は同じです。このように、黒字(利益)であることと、手元に現金があることは、同義ではありません。