3.キャッシュフロー計算書の構造

 一定期間における現金(現金及び預金などの現金同等物)の増減と残高を表した計算書がキャッシュフロー計算書で、次の3つの区分から構成されています。

(1)営業キャッシュフロー(営業CF)

 この営業循環過程で増加した現金を「営業CF」と言います。これは当期利益(つまり売上ー費用)に減価償却費を足し、運転資本(在庫+売掛金ー買掛金)の増加額を差し引いた値です。ここで利益に減価償却費を足す理由は、減価償却費は現金支出を伴わない費用であるからです。つまり、利益+減価償却費(これをキャッシュ利益と言います)以上に運転資本が増えると営業CFはマイナスになり、「勘定合って銭足らず」の状態になります。

 営業CFは、本業での現金の増減を表しており、健全な会社であればここはプラスです。もしも、営業CFの赤字が何年も続き、改善の兆しが見えない場合、会社は重大な危機を迎えることになります。

(2)投資キャッシュフロー(投資CF)

 固定資産(現金製造機)の購入や売却にかかわる現金の収支を「投資CF」と言います。具体的には、機械設備、建物、土地、子会社株式の取得と売却、投資目的で保有する株式の売買、子会社などに対する資金の貸付や返済などです。健全な会社は積極的に投資活動を行っていると考えられますので、この値はマイナスになります。

 不景気に喘いだ1990年代後半の多くの日本企業のように、投資を控えると営業CFは減少します。会社が存続するには、少なくとも現状を維持するだけの投資支出は必要です。営業CFから投資CFを差し引いた値を「フリーキャッシュフロー(FCF)」と言います。キャッシュフロー経営では、原則としてFCFは黒字であることを要求しますが、これは「経営者は営業CFを最大にして、その範囲内で有効な投資をすべきである」という意味です。

(3)財務キャッシュフロー(財務CF)

 銀行借入、社債の発行、株式の発行(増資)、配当金の支払、自社株の購入等、ビジネスの基盤を支えるための現金収支を「財務CF」と言います。

 キャッシュフロー経営の立場から言えば、投資は営業CFの範囲にとどめるべきです。しかし、巨額な設備投資や子会社買収を行う場合にはそれだけでは足りませんから、銀行借入や増資で調達することになります。

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(連載了)


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