・本日(9月27日)の日経新聞に、「欧州、ドラギマジックいつまで」という記事が掲載されている。7月末にECB(欧州中央銀行)のドラギ総裁が危機対応に踏みだす宣言を行い、9月の無制限の国債購入公表で、市場心理改善が続いた。スペインの国債金利も低下した(グラフ参照)。こうした対応が「ドラギマジック(魔術)」と評されている。

・経済活動に直結する国債金利を低下させる金融緩和策は、本来ならば、中央銀行が持つ有力な政策手段である。ECBによる国債購入策を決めたことで、政治的なハードルを乗り越え、通常の中央銀行が持つ政策が行える状況に一歩近づいた。米英などと同様に中央銀行が本来持つ対応策がユーロ圏でもようやく機能し、そしてECBが「最後の貸し手」としての役割を担うようになったわけだ。
・2011年末に導入されたLTROの効果で金融市場が落ち着いた時にも、ドラギ総裁の対応は、メディアでは「ドラギマジック」と呼ばれていた。それと同様に、今回も中央銀行が持つ対応策を取り戻しつつあることが、「マジック」と評されていることを、どう考えれば良いのか?
・マジック・魔術とは、「人の目をくらまして、実際には起こりえない不思議なことやってみせる術」(goo辞書)、である。中央銀行による金融緩和策が、「人の目をくらます」対応策に過ぎない、というニュアンスが込められているのかもしれない。
・あるいは、マジックによる「目くらまし」の効果がなくなれば、現実の問題が浮き彫りになる事が強調されている面もある。2010年以降、何回か対応が打ち出されても欧州では問題が再燃してきた。そうした経緯を踏まえ、同様の展開が続くことを予見したうえで、「マジック」に過ぎないということである。
・ただ、最終的にユーロ体制を維持・安定させるには、財政政策や銀行システムをユーロ圏で統一させるという、非常に時間がかかる制度改革が必要になる。これは、時間がかかる長期的な問題だし、政治的に乗り越えるハードルも残っている。
・一方、そうした制度改革を進める環境を整えるため、とりあえず経済状況を安定させる対応が同時に必要になる。欧州の場合、経済安定化策として機能しなかった金融政策を働かせることになる。こうした意味で、ECBによる無制限の国債購入という金融政策の強化は、「マジック」というより、長期的な問題収束に向かう第一歩という位置づけが可能だろう。
・本日の日経の記事では、ECBドラギ総裁がドイツ側の反対意見を説得し無制限の国債購入策に踏み出した経緯について、「ユーロ体制の力学」を変えたとも評されている。5月にギリシャユーロ離脱懸念が浮上し、ユーロ崩壊シナリオが現実味を帯び、問題収束の第一歩となる現実的な対応策がようやく実現したとも考えられる。
・昨日(9月26日)スペイン国債金利が、緊縮財政策に反対するデモ発生で再び上昇している。問題収束にむけた対応策が実現した点で、欧州は「一歩前進」した。目先は、政治要因で「半歩後退」の場面かもしれないが、その繰り返しが続くのではないか。

(チーフ・エコノミスト 村上尚己)
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