NHK職員のインサイダー取引疑惑が問題となっている。橋本元一会長は責任を取って辞意を表明した。

 この事件は、昨年3月8日の午後3時のニュースで報道した「ゼンショー」と「カッパ・クリエイト」の資本提携のニュース原稿を、3名の職員が局内の報道端末を通じて放送前に読み、カッパ株を購入したのだという。

 これはあまり触れられていない論点なので、まず最初に言っておきたいが、そもそも業務提携などという重要な情報がリークされたこと自体、当事者である企業の責任である。カッパ社もゼンショーも大いに反省しなければいけない。

 どこからか情報が流れたとはいえ、事実確認せずにニュースにすることはないので、記者は必ず企業に裏を取りにきたはずだ。そのときにリークした企業関係者が存在する。適時開示の原則からすると、こうした情報は、場が引けた3時以降にTDネット(東証適時開示端末)に登録することになっている。どういう経緯でスクープされたのかを、企業側はきちんと調査しておくべきだろう。上場会社としてはあまりにも情報管理が甘い。

 現に、インサイダー取引が疑われている3月8日当日のカッパ社の株式出来高は通常よりも10万株以上も多い17万1100株にも及んで、株価も引けにかけて大きく上昇している。NHKの職員3名によるインサイダー取引が疑われている売買は7150株といわれているところからすれば、他にも情報を知って株式を買った投資家がいた可能性は否定できない。

大引け直後のスクープ報道に
どれほどの意味があるのか

 NHKにしても、こういったセンシティブな情報を、証券市場の大引け直後の3時のニュースで流すことにどれほどの意味があるのだろうか。5時のニュースであれば、こうした問題は起きなかった。スクープだから他社に抜かれる前に、というのはわからないではないが、他のやり方もあるだろう。情報はタイムリーにディスクローズすることが原則だと考えるならば、NHKにもそれなりの配慮があってよかったのではないか。

 今回、NHKの報道端末は、約5000人がアクセスできる状態にあったという。実にお粗末な話だが、記者としても、大人数が閲覧可能なシステムに情報を上げる際には、相当慎重でないといけない。