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名目GDPと株式市場〜米欧と日本の大きな違い〜 - 村上尚己「エコノミックレポート」

8月1日レポートでは、日本の名目GDPがリーマンショック直後からほとんど伸びず停滞していることを説明した。名目GDPは、日本国内で生み出される、家計所得や企業利益などの総額の動きを表す指数である。

・日本では、名目GDPの停滞が顕著だが、他の先進国の状況を確認してみよう。グラフでは、米国、欧州(ユーロ圏)、日本の名目GDPを、リーマンショック直前の2008年半ばを100で並べて比較している。日本の名目GDPは、リーマンショック後に落ち込んだが、東日本大震災前の水準にも達していない。一方、米国、欧州(ユーロ圏)は、2009年以降ペースの差はあるが増え続けている。


・そして、米国は2010年半ば、ユーロ圏も2011年になって、リーマンショック直前の名目GDPの水準を上回っている。もちろん、欧州債務問題の震源地である欧州は、2011年半ばから成長率が減速し、+4%前後の名目経済成長が続く米国との差が広がっている。

・このように米欧の間でも差はあるが、2008年のリーマンショック以降、経済状況がどの程度復調しているかという点で、米欧と日本に大きな違いがあることは明白である。米欧経済全体でみれば、リーマンショック前の水準まで、家計収入や企業利益の水準は既に戻っているわけだ。

・もちろん、米欧諸国も、リーマンショックの原因となった歴史的な不動産ブームの崩壊がもたらすバランスシート不況に苦しんでいる。異例な金融緩和策が採用されているにも関わらず、従来のように順調に成長率が戻らず、「正常な状況に復調する過程」がかつてないほど長期間続いている。

・特に、2011年以降、欧州債務問題の対処に苦慮して、欧州経済は大きな苦境に直面している。これが大きな問題であることは確かだが、名目GDPの推移が示すように、債務問題への対処に苦労しながらも、ドイツやフランスなどの大国を中心に経済状況はそれなりに戻っている。

・米欧経済も未だに問題を抱えているが、それでも家計あるいは企業の所得水準が、リーマンショック前に戻っていることは大きい動きである。かつての経済状況に戻った、あるいは戻りつつあることを企業経営者や人々が感じれば、「将来もっと豊かになれる」という期待を皆抱くことができるからである。

・そして、この名目GDPの推移が示す米欧日の経済状況の差は、株式市場でも現れている。グラフでは米日欧の株価水準を比較しているが、リーマンショック後の2009年以降の株式市場の様子は、名目GDPの推移とほぼ同様の姿である。


・もちろん、名目GDPと株価水準が一致するほど、両者の関係は単純ではない。株価は、将来の企業利益の「期待」を反映して変動するからである。ただ、「経済全体の豊かさ」を表す名目GDPの動きは、長い目でみれば企業全体の利益を規定する。だから、名目GDPの動きが、企業利益が今後持続的に伸びるか否かという、「期待」を通じて株式市場にも大きく影響する。

・短期的には欧州債務問題や世界経済の動向が、今後のマーケットの大きなテーマになる状況は、当面変わらないだろう。ただ実際には、長期的な日本株の停滞の原因は、欧州債務問題などより、米欧に大きく見劣りして日本の名目GDPが増えないという、「国内要因」が大きく影響しているわけだ。

・こうした意味で、日本株がこれまでの停滞を脱するためには、持続的な経済規模つまり名目GDPを抑制している「デフレ」の克服が極めて重要なことが分かる。この状況を正確に認識した上で、必要な経済政策の対応が実現するか。それが、日本株が長期停滞から脱することができるか否かの、最も重要な点である。




(チーフ・エコノミスト 村上尚己)

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(マネックス証券)


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