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9月28日 18時0分
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日本株式市場展望(2012年10月) 10月相場を読む - 広木隆「ストラテジーレポート」

日本株については相変わらず悲観論が多い。世界の主要市場のなかで、日本株式市場の出遅れ感は確かに顕著であり、その理由は日本株式市場の構造的な問題に起因するところが大と考えるが、短期的な相場見通しを語る本稿ではそれにはあえて言及しない。

悲観論の多くはこのような論調である。いわく、日本株相場は年内じり安で推移する。その理由として、①世界経済の減速、特に中国経済の落ち込みがひどいこと、②欧州債務危機の根本的な解決は見通せないことからリスク回避的な姿勢が継続すること、そして③米国の量的緩和による円高懸念が日本株の重石となること、等々とそのようなトーンの議論をよく目にする。

日本株相場トレンド
まず事実の確認から行いたい。グラフ1は日経平均のチャートである。どう見えるだろうか?筆者の目には底値も高値も徐々に切り上げ、右肩上がりの上昇トレンドを形成しているように見える。表1は東証1部の売買代金の推移である。一時の超閑散を脱して1兆円以上出来る日が増えてきた。直近のデータではまた売り越しとなったが、外国人の買いも入るようになってきた(グラフ2)。







米国経済
次に米国景気。従前から指摘している住宅市況の底入れ感に加えて、足元では企業や消費者マインドの改善が目立つ。例えばフィラデルフィア連銀による製造業景況感調査や消費者センチメントなど(グラフ3、4)である。これについては「エコノミックレポート」「米国景気の今を読む」に詳しい。ご確認いただきたい。





欧州債務危機
次に欧州債務危機。これがいかに「茶番」であるかは再三述べてきたので、ここでは事実だけ挙げる。グラフ5は世界主要株価指数の年初来騰落率である。債務危機に揺れる欧州の中核国、ドイツのDAX指数の上昇が際立っている。上場来高値を更新したアップルやグーグルなどハイテク株を擁する米国ナスダック総合株価指数の上昇率を遥かに凌ぐ。グラフ6はユーロ円のチャートである。これだけ大騒ぎをしながら、ユーロは年初の水準と同じである。仮に年初からドイツ株に投資していれば、為替でやられることなく株価上昇をそっくり享受できていたであろう。





その欧州債務危機もECBが「無制限」国債購入を打ち出したことで収束に向かう。欧州債務危機とは南欧の国債が「危機的」なレベルまで売られる騒動のことだから、それを中央銀行が「無制限」に買い入れると言えば、危機は拡大しない。よって終わりが見えたということである。何度も述べてきたことだが、南欧諸国の財政問題は今に始まったことではなく、国債が暴力的に売られること(すなわち欧州債務危機の事象)の材料にされているだけである。もっと言えば、通貨と金利はひとつなのに財政はばらばらというユーロの「弱点」だってユーロ発足当時から指摘されてきたことである。そのことは欧州債務危機の本質ではないので、「政治統合の道のりが遠い」から「危機は収束しない」というのは誤解というより詭弁である。

事実確認に戻って、グラフ7は欧州のPMI(購買担当者景況感指数)である。好不況の判断の分かれ目とされる50は依然下回るものの2カ月連続の改善を示した。欧州の景況感も最悪期は過ぎつつあると思われる。



ここからは予想を述べる。それは一般に考えられていることとはやや奇異に聞こえる予想かもしれない。その一つ目は、欧州の景気は回復に向かうというものだ。その理由は債務危機が収束に向かうことが認知されるに従って、企業・消費者心理が改善するからである。そもそも欧州の景気をここまで冷え込ませたのは債務危機が原因だったわけだから、それに対する懸念が後退すれば景気にも好影響があると考えるのが普通だろう。

中国景気
「アンチ・コンセンサス予想」の二つ目は、中国景気の改善である。今、最も世界景気の減速感をリードしているのが中国であるが、こちらも今後は回復してくると考える。まず欧州債務危機が収束に向かい、欧州景気が多少なりとも回復してくれば、それは中国の輸出にとっても好影響が出るだろう。27日付の日経新聞にあったように公共投資の認可が加速されている。1兆元の景気対策の効果が固定資産投資の面で表れてくるだろう。共産党大会で習近平への権力移譲が無事終了すれば党内の権力抗争も落ち着き、景気対策にも本腰を入れやすくなると思われる。すでに銅など産業用金属の価格は上昇しているが(グラフ8)、中国の固定資産投資の増加を織り込んでいるものだろう。この点については9月21日付け「エコノミックレポート」を参考にしてほしい。10月1日に発表される中国のPMIは50.1に改善が見込まれている。



企業業績見通し
次はモデレート(中庸)な予想を述べる。10月から始まる7-9月期の企業決算は、米国は無難に、日本は若干の下方修正となるだろう。米国企業は過去2四半期、減益になる可能性も取り沙汰されながらも無難な着地となってきた。今回もまた同様の結果となるだろう。理由は前述した通り、足元で企業や消費者マインドの改善が目立つからである。企業業績もこれと整合的な結果になると期待される。9月21日現在のトムソン・ロイターの調べによると米国主要500社の7-9月期は2.2%の減益が見込まれている。米国の企業業績の足を引っ張るのはエネルギーと素材セクターの大幅減益である。いうまでもなく景気減速による商品市況の低迷が要因であるが、世界的な金融緩和によって市況は好転しつつあり、それらのセクターが予想されているほど落ち込まない可能性もあるだろう。

前回の決算で特筆されたのがアップルの不振だった。但し、それはiPhone5の発売を待つ買い控えが原因だった。今回はもうその影響は懸念する必要はない。加えて、インテルやキャタピラーなどが決算に先立って下方修正を発表しており、業績の伸び鈍化は相場に織り込み済み。ここからの大きな下振れはないだろう。

日本企業の業績については、これまで下方修正含みの論調が多い割には実際にはほとんど下方修正は進んでいない。グラフ9は、日経平均のPERから逆算した日経平均のEPSである。4-6月期の決算発表を受けて下方修正された後は、ほとんど変わっていないどころかむしろ上方修正含みで推移してきた。これは日経予想に基づくものだが、市場のアナリスト予想も大きくは変わっていない。クィックコンセンサスは未だに今期経常利益の伸びを20%と見ており、会社側予想を上回っている。IFISジャパンのデータによる市場のコンセンサスは約19%増益予想。これは前述のクィックコンセンサスと4-6月期決算終了時の日経予想18%のちょうど中間にあたる。いずれにせよ、リビジョンインデックスは底這っているものの、予想経常利益の絶対額そのものは大きく動いていないのである。7-9月期の決算発表を受けてから下方修正が起こるのだろう。9月中間期を締めた段階では2桁増益予想の半ばから前半あたりで着地するのではないかと思う。イメージとして期初の22%増益が4-6月期に18%増益に下方修正され、7-9月を終えて13〜15%増益程度となるのではないか。業績については、フォローアップして報告したい。


金融政策
金融政策についても追加緩和期待が醸成されると考える。10日1日に発表される日銀短観は大企業製造業でDIのマイナス幅が拡大すると予想されている。また来月末の物価展望レポートでは2014年の物価見込みを公表するが、日銀がこれまで達成可能としてきた1%の物価上昇の目途はとうてい掲げることはできないだろう。再度、追加緩和期待が高まるとの判断はそれゆえである。加えて、10月の下旬には米国でFOMCが開かれる。QE3を決めた直後であり、大きな政策の変更はないだろうが、FOMC後の声明やバーナンキ議長のコメントで市場が動く可能性がある。どちらにせよ、FRBは株式市場にフレンドリーな政策に舵を切っている。相場格言通り、「FEDに逆らうな」で臨むべきであろう。

政治
自民党の総裁に安倍氏が選出された。日銀の政策についてもっとも踏み込んだ発言をしていた方である。今後、緩和圧力が強まるはずである。それにもかかわらず、市場は反応していない。当たり前である。まだ民主党が政権の座にあるからだ。「近いうち解散」が近いうちにあるのか、来年夏まで現政権が続くのか分からない。しかし、10月後半と想定される臨時国会で赤字国債の特例法案を通す必要がある。その駆け引き次第では解散・総選挙が目に見える形で浮上する。各種世論調査では時期首相は安倍氏との結果になっている。市場も無視できなくなってくるだろう。また、時間が経過すればするほど白川総裁の後任人事も俎上に上ってくる。市場では、じわりと「リフレ色」が意識されるようになるだろう。

そして解散・総選挙が意識されるようになった場合、「日本が変わるかもしれない」という期待を外国人に抱かせることができるかがポイントである。2005年の小泉・郵政解散の再来となるかどうか。維新の会の勢力もあって、その可能性がないわけではない。いずれにせよ、今は政局の動きを注視するしかないだろう。

米国の財政の崖
2013年から、いわゆるブッシュ減税が期限切れとなり「実質的増税」となるところに「強制的な歳出削減」が重なり、崖から落下するような急激な財政の引き締めが起こってしまうことを指して「財政の崖(フィスカル・クリフ)」という。 年末が近づくにつれ、この「財政の崖」問題が意識され相場の重石となると指摘されている。しかし、1年も前から言われていることが相場のリスクになるとは思わない。この問題があるから米国の企業経営者はすでにじゅうぶんに慎重になり、手元キャッシュを溜め込み、設備投資を控え、雇用を削減してきた。すでに財政の崖問題は米国経済に反映されている。その結果として景気回復が遅れてきたのである。それを織り込んでの相場展開であった。財政の崖でもっとも影響を受けるのは防衛関連産業である。だから防衛関連の株価パフォーマンスは低調である。グラフ10はフィデリティが運用する「航空宇宙&防衛関連ファンド」のパフォーマンスをS&P500と比較したものである。ここから明らかなように、市場は財政の崖問題を織り込んで推移してきたと思われる。そして結局のところ、減税は延長されるだろう。昨年夏に債務上限問題が政治の迷走で紛糾したが、結局落ち着くべきところに落ち着いた。ある意味、出来レースなのだろうと思う。11月には米国の大統領が決まる。オバマ氏になるかロムニー氏になるかわからないが、どっちになっても新大統領の就任式を連邦政府歳出カットのため細々と執り行うというのでは洒落にならないではないか。



まとめ

日本株は上昇トレンドが継続している。
米国景気は回復基調が鮮明になっている。
欧州債務危機は収束に向かうだろう。
中国景気も景気対策の効果で上向いて来よう。
企業業績は日米ともに「まあまあ」無難な結果。可もなく不可もなくといったところか。下方修正は織り込み済みの範囲内にとどまるだろう。
金融政策は世界的に緩和が続く中で、日銀が追加緩和に踏み切る(追い込まれる)可能性が高い。
政治の動きも、場合によっては日本株買いの材料となるが、これはまだどうなるか不透明である。
米国の「財政の崖」はすでに相場に織り込まれており、波乱となるリスクは少ない。

こう見てくると日本株の下値不安要素は少ない。9月の市場展望で示したように、日経平均は9,000円の大台固めから、9,500円絡みの水準へとレンジを切り上げていくものと考える。尚、為替については9月の市場展望と変わらないビューを持っているので今回は割愛した。為替については過去レポートをご参照いただきたい。


(チーフ・ストラテジスト 広木 隆)

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