カンボジア 2012年10月2日

アンコール遺跡群だけじゃない、カンボジア観光
“手つかずの自然”や”昔ながらの暮らし”が魅力

朝日新聞のマニラ支局長などを経て2009年に単身カンボジアに移住、現地のフリーペーパー編集長を務めた木村文記者が、カンボジア観光の新たな一面についてレポートします。

 カンボジアといえば、世界遺産「アンコール遺跡群」である。日本で、「一度は行きたい世界遺産」というアンケートをとると、必ず上位に入る人気観光地。そしてその期待にたがわず、アンコール遺跡群は圧倒的な迫力をもって観光客を迎えてくれる。

 言うまでもなく、アンコールワットを初めとする遺跡群は、カンボジア観光業界のドル箱だ。アンコール遺跡群のある北西部の都市シェムリアップを中心に、カンボジアを訪れる外国人客は増加傾向にあり、2011年に280万人に達した。今年は330万人にのぼるとみられている。ちなみに、最も多い外国人観光客はベトナム人。隣国の経済力が底上げされていることを実感する。

 もちろん、アンコール遺跡はすばらしい。だが今回は、アンコール遺跡以外のカンボジアの「素顔」、まだあまり知られていない地方のすばらしさをぜひご紹介したい。

負の遺産を魅力へ

 1990年代の後半まで、内戦終結後も治安の悪い状態が続いたカンボジアでは、外国人が安全に旅行できる場所が限られていた。特に、旧ポル・ポト派の支配地域では、2000年代になってやっと安心して旅ができるようになった村も多い。

 こうした地域は開発が遅れている分、手付かずの自然や昔ながらの暮らしが残っている。カンボジア政府の観光当局はこれに目を付け、自然をそのまま生かした「エコツーリズム」を、遺跡観光に次ぐ、カンボジア観光の売りにしようとしている。急速な開発が進む東南アジア諸国では、素朴な暮らし、豊かな自然は逆に希少価値がある。いわば未開発を逆手にとり、「周回遅れのトップランナー」を目指そうということだ。

 エコツーリズムの拠点には、私もいくつか訪れたことがある。その中で最も整備されていると感じたのは、首都プノンペンの南、コンポンスプー州のキリロム国立公園内にある「チョンボック地区」だ。

 チョンボック地区には9つの村があり、約800世帯が暮らしている。内戦を逃れるために移住していた村人たちが帰ってきたのは1983年のことだった。しかし、村を取り囲む広大なジャンルグルにはポル・ポト派が拠点を築き、村人たちも物資の運搬など協力を余儀なくされた。ポル・ポト派が組織的に消滅した98年ごろからは農作業も始まったが、荒地の農作業は厳しく、人々は森に入り、目先の収入を得るために密猟や無計画な伐採をするようになってしまった。

 このままでは村の資源は枯渇する。危機感をおぼえた村人たちは、2001年、自然保護団体と協力してエコツーリズムによる村おこしを開始した。自分たちでエコツーリズム運営委員会を作り、道を整備し、集会所を作り、翌年から入場料(1人3ドル)をとって観光客を受け入れ始めた。

 といっても、立派なハコモノや娯楽施設を作ったということではない。高さ40メートルから落ちる絶景の滝まで山道を小一時間ほど歩く過酷なピクニック、どこまでも青々と続く水田の農道をママチャリで走るサイクリング、農家の軒先で女性たちの内職であるツル細工づくりを見学する工芸村訪問。あとは、散歩。1時間2.5ドルを支払って村人が農作業に使う牛車を借り、葉陰の小道をのんびりと行く。ただそこにある風景を眺めるだけなのに、不思議と飽きない。何もないことが、チョンボック観光の魅力になっている。

まっすぐに流れ落ちる豪快なチョンボックの滝。過酷な山歩きの後、視界が開けたところにあるので感激もひとしお。滝つぼでは若い男女がよく「合同ハイキング」している【撮影/木村文】
チョンボック地区の出入り口に掲げてある案内地図。一本道です、というだけの素朴さが魅力【撮影/木村文】

  


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橘 玲(Tachibana Akira) 作家。1959年生まれ。早稲田大学卒業。「海外投資を楽しむ会」創設メンバーのひとり。著書に『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』『(日本人)』(幻冬舎)、『臆病者のための株入門』『亜玖夢博士の経済入門』(文藝春秋)、『黄金の扉を開ける賢者の海外投資術』(ダイヤモンド社)など。
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