橘玲の日々刻々 2012年10月4日

[橘玲の日々刻々]
海外資産の申告義務化で
"小金持ち"が陥りかねない罠

 この事件で最初に逮捕・収監されたのはフロリダの会計士で、UBSにオフショア籍の法人名義で秘密口座を保有し、700万ドル(約5億6000万円)の未申告の収益を不正に米国内に還流させ、不動産などを購入していた。それ以外でも、UBSのプライベートバンカーの勧めに応じて“高度な節税スキーム”を利用した顧客が、意図的な租税回避として軒並みIRSの標的にされたのだ。

 米国と同じく日本の税法も、オフショア法人の安易な利用を「タックスヘイヴン対策税制」で規制している。

 オフショア法人には原則として法人(所得)税が課されないから、金融資産をオフショア法人の口座で運用したり、事業所得をオフショア法人に移転するだけで税金を払わなくてもよくなってしまう。これでは国家の税収が大きな打撃を受けるので、日本の税法は、日本の居住者(個人・法人)が50%超の株式を保有するオフショア法人に対しては、その所得を株主の所得と合算して課税すると定めている。オフショア法人の実質的な所有者と見なされれば、法人の利益は個人の所得に引き直されて日本国内で課税されてしまうのだ。

 複数の法人や信託を組み合わせるなどして、日本の居住者の持ち株比率を50%未満にしてしまえば、形式上、タックスヘイヴン対策税制の対象から外すことができるが、このようにスキームを複雑にすればするほど投資家は罠にはまることになる。資産の実質的な所有権は個人に帰属するほかはなく、金融機関は「真の受益者(誰のサインで口座資金が動くのか)」を知っている。どれほど高度な節税スキームでも銀行の顧客情報が開示されてしまえばなんの意味もなく、そのうえ「たんなる勘違い」という言い訳が成り立たなくなって、故意による租税回避であることを自ら立証してしまうのだ。

 PBがオフショア法人などを使った複雑なスキームを勧めるのは顧客のことを考えているのではなく、そのほうが高い手数料を請求できるからだ。そのうえ税務調査で問題になったときも、彼らはなにもしてくれない。

 UBSは世界でもっとも有名なプライベートバンクのひとつだが、脱税幇助で米国政府から告発されたとき、彼らが真っ先にやったのは顧客を見捨てることだった。

合法的な回避法

 国外財産調書の提出を合法的に回避するにはどうすればいいのだろう。

 調書の提出義務を負うのは、「日本に居住する個人」だった。だからこそPBは、「個人」を「法人」に変えるというスキームを提案したのだが、それがうまくいかないのなら、もうひとつの条件である「居住」を外せばいい。すなわち、日本の非居住者になればいいのだ。


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橘 玲(Tachibana Akira) 作家。1959年生まれ。早稲田大学卒業。「海外投資を楽しむ会」創設メンバーのひとり。著書に『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』『(日本人)』(幻冬舎)、『臆病者のための株入門』『亜玖夢博士の経済入門』(文藝春秋)、『黄金の扉を開ける賢者の海外投資術』(ダイヤモンド社)など。
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