石原慎太郎・東京都知事の発案で開業した新銀行東京が、船出からわずか3年にして、暗礁に乗り上げている。赤字を垂れ流し、累積赤字はすでに1000億円にふくれ上がっている。再建の具体策が見えないなかで追加出資を行なおうとする都に対し、野党のみならず与党からも慎重論が噴出する。こうしたなか、関係者のあいだでは、事業撤退へのシナリオが囁(ささや)かれ始めている。

 「旧経営陣を訴えるのはまったくの筋違い。そんなことをすれば、現経営陣こそ、返り血を浴びるだろう」(新銀行東京の元幹部)

 東京都が3年前、血税1000億円をつぎ込んで設立した新銀行東京の再建をめぐり、関係者らが互いに責任を押し付け合う泥沼劇を演じている。

 石原慎太郎・東京都知事は「“半年後までつぶれない会社なら融資しろ”という常識はずれな経営がなされた」と、旧経営陣を厳しく非難。津島隆一・代表執行役も、開業時の経営陣に対し、「刑事(告訴)を含めて責任追及を検討する」との考えを明らかにした。

 こうした過激発言が飛び出す背景には、経営状態がいっこうに好転しないことへのいらだちも垣間見える。

 石原都知事はこれまで同行への追加出資の可能性を否定してきた。ところが、2月中旬には一転。都は400億円の追加出資の補正予算案を都議会へ提出した。

 だが、来年夏に都議会議員選挙を控えるなか、民主、共産の両党は追加出資を批判。公明党も慎重姿勢を見せている。追加出資が認められなければ、経営破綻の可能性が高まる。

 そもそも新銀行東京の設立構想をぶち上げたのは石原都知事自身である。2003年4月の都知事選挙で中小企業支援策を公約に掲げ、その2年後に開業した。また、同行設立の旗振り役は大塚俊郎・前都副知事(現在は新銀行東京取締役会議長)。津島代表執行役は元都港湾局長で、同行の開業準備室本部長だった。

 それゆえ、「不良債権処理を終えた金融機関が中小企業融資を積極的に始めていたにもかかわらず、当初計画どおりに開業してしまった彼らこそがA級戦犯だ」(関係者)との声も上がる。