9月18日の「国辱日」に峠を越えた過去最大級の反日デモから8日後の9月26日、日本の大手新聞社は、トヨタが最高級車ブランド「レクサス」の10月の現地生産停止や完成車の対中輸出停止の方針を固めた、と報じた。トヨタは昨年、中国大陸で88万3000台を販売(うち現地生産は80万台)、今年は100万台を目標に掲げていた。

 全国的に盛り上がった反日デモでは、日本車というだけで、見境なく突如襲撃される事件が相次いだ。

 陝西省西安市では9月15日午後、長男の結婚準備の買い物のために日本車を運転して夫婦で出かけた中国人が暴徒に囲まれ、鋼鉄製の鈍器で頭を殴られ頭蓋骨骨折・半身不随になったという悲痛な事件が起きた(主犯格の男は10月2日、湖南省で当局により拘束された)。

 中国における8月のトヨタ車の販売台数は7万5300台。消費の減速や尖閣問題のくすぶりも影響してか前年同期比15.1%の落ちこみだったが、「大金をはたいて日本車を購入したところで、反日デモの標的にされたらひとたまりもない」という心理は、今後ますます日本車の消費を冷やすだろうと言われている。

背水の陣で中国進出した
日本の中小企業は今

 トヨタとも間接的に取引のある愛知県の自動車部品加工メーカーのA社は、江蘇省の経済開発区に昨年、新工場を設立。しかし尖閣諸島の国有化をめぐる対日制裁によって、のっけから先行きには黒雲が垂れ込めている。中国での日本車販売が苦境に立たされる中、同社もその影響とは無縁ではいられなかった。

 筆者がA社の現地工場幹部であるBさん夫妻と面会したのは、奇しくも冒頭のトヨタのニュースが報じられた9月26日だった。A社の跡継ぎでもあるBさんは、「正直、事業環境は厳しいし、緊張状態が続いています」とコメントする一方で、「実は最近、その新工場のそばに住宅を借りたばかりなんです」と打ち明けた。