思い切りと抜きどころのさじ加減

 強迫観念とまではいかなくても、こういう経験はありませんか。
「英単語はAから覚えないと落ち着かない」
「つまらない本でも、最後まで読み終えないと気が済まない」
「報告書を書いたが、誤字や言い回しがおかしくないか気になる」

 きちんとした性格の人がえてして陥りやすいワナです。英単語をAで始まる単語から覚えていたのでは、非効率的なことはわかっていても、適当な場所から覚え始めるのに抵抗を感じた経験は、まじめな人にはあるのではないでしょうか。

  今の社会人なら、読書が「強迫観念」の影響を受けているかもしれません。ただでさえ多忙な社会人です。読書も効率化が求められます。自分にとって役に立たない本を読み切るのは時間の浪費です。
  ところが、全部読まないともったいない、きちんとすべて目を通しておきたいという完全主義者は、関心が持てない内容を気が進まないまま、でもしっかり1冊読み通して全部読んだという事実に満足します。
  言い換えれば、途中で読書を中止することが不安でできなかった、とも解釈できます。

  思い切りもときには必要です。

  きっちりぬかりなく仕事をする人は、多かれ少なかれこういった「強迫性」を持っているものです。しかし、プラスの完全主義の人は、思い切りと抜きどころをわきまえています。なにより、「成果を出すこと」が目的であり、「完全にやること」が目的となっていないからです。非効率な「強迫観念」から離れて、抜きどころをわきまえたバランスのいい「強迫観念」に変えていけばいいのです。

(本稿は『今の働き方が「しんどい」と思ったときの がんばらない技術』西多昌規著からの抜粋です)
 


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